【真剣!野良仕事】[187=東屋の命名]

2012.7.6(金)
東屋の名称、ワレに三案あり
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↑飯島農園の一角に竣工した東屋。昼食時にはフル稼働。みなさん、休戦中とは到底思えないやわらかな表情。たたかい済んで、なんて雰囲気は微塵もないんです。
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↑われらが阿部さんご夫妻。
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↑われらが大村さんご夫妻。


 先日、農事の慰労と豊作祈願を兼ねた伝統的な祝祭「さなぶり」に出席した折り、阿部さんからこんな耳打ちがありましてね。

阿 部 ものにはすべからく名前があります、よね。
長谷川 ええ、そのとおり、だと。
阿 部 で、ですね。先日来、大村さんと会うごとに「東屋の名前をどうしましょうか」と、名無しでいる限りは愛情も愛着も湧いてこようはずもなく、名前を今すぐにでも決めなくてはならぬってな表情で迫られて、ですね。少し考えさせてくださいってその場はなんとか躱したんです。
長谷川 さすが阿部さん、お見事ですね、躱しかたが。大村さんの迫りかたって、独特のものがありますからね。ついつい引き込まれて、思わず知れず同意していることがあるでしょ。翻意できずに、同意してしまうこと、過去にも多々、ありましたよね。
阿 部 ですよね。で、です。「ものには名前が必要である」に戻るのですが、先日来、竣工した東屋の名前をどうしたものか、というのが差し迫った難儀なんです。
長谷川 ボクとしてはそのうちに然るひとがたが決めてくれればいいなと、まったくの傍観者でいたかったのですが、そうですか、必要でしょうね、やはり。例えば、「今日のお昼は竹林にしましょうか、好人舎、それとも、畑に先日作ったあの休憩所?」では、すべりが悪いというか、固有名詞化されていないというか、扱いが一段低いというか、同列ではなく、軽ろんじているようでもあり、なんとも嫌ですね。
阿 部 まさしく。それで大村さんと正面切って顔を合わせる前に、自分なりに候補を考えておこうと思いまして、いくつか考えてみたんですが、なかなかいいのが出てこなくて。
長谷川 そうだったんですか。
阿 部 そうこうしているうちに、大村さんと再び三度会う機会があって。大村さんから、こんなの、どうですって。
長谷川 満を持してというか、先制攻撃を浴びちゃった?
阿 部 ええ。
長谷川 おお、さすが大村さん。どうでしたか?
阿 部 大村さんが言うには、あの休憩所は、本質的には休戦ライン上の休憩所なんだと。
長谷川 え? 急戦? 旧線? 休戦?
阿 部 北緯38度線の休戦ライン。畑は一種の戦場であるとしたら、休戦して休憩する場所が必要であろう。男と女の間にも、休戦ライン上の休憩所が必要であろう。しかるならば、板門店と名付けてもよいのではないか、と、だいたいそのような論旨で、あそこの東屋を「板門店」と命名したい、と。ヒトとヒトとの関係を下敷きにした論理の展開。でも女性陣から「休戦ライン云々は露骨すぎやしないか」と反駁があるだろうし、ここは「板」の字を「飯島の飯」に、「店」の字を「天」に替えて「飯門天」としたい。以上が大村阿部のたたき台なんですが、長谷川さん、どう?
長谷川 どうっていわれても、即答しなければなりませんか。
阿 部 結論は性急に求めてはいませんが、ひとつ、考えておいていただけますか?
長谷川 ええ、考える時間をください。

 そんなこんなのおしゃべりがあり、ビールを結構おいしくいただき、酩酊して帰宅。
 それから5日間。煩悶天をも突かんばかりの5日間でした。
 板門店、板門天、反問転、煩悶展、斑紋点。

 38度線上の板門店に縛られて、なかなか新規案が出てこないのです。

 そして6日目の今日、呪縛から開放されて、ふっと軽やかな名前がいくつか浮かんできましたので、ここにご披露したいと思います。

【案一】
 好々亭。

 飯島農園のシンボルでもある母屋、好人舎ですが、これに少しは関連を持たせての「好々亭」なのです。気分としては、集うひとの顔を思い浮かべると、どうしても「好々爺」という字面が浮かんできますが、女性陣から男性中心主義だとか、この年になっても性差別はいかがなものかと、きつい寸鉄をいただきそうで、このことはいっさい表に出さず、ひたすら好人舎関連で押し通さん。

【案二】
 去来亭。

 隠遁生活への憧れを綴った陶淵明の「帰去来辞」、有名なあまりにも有名な「田園将に蕪れなんとす なんぞ帰らざる」を下敷きにした去来亭もまた、おおいにユートピア的で、候補として落としがたい。

【案三】
 二十歳亭。

 私事ですが、実は成人する1年前から、李賀のこの一節に悩まされていまして。夜ごと悪夢に脅える日々を過ごしていたんです。成人式にも出席せず、自室に閉じこもって、二十歳という年齢を早く踏み越したいと念じつつ、この「長安に男児あり、二十歳にしてこころ、すでに朽ちたり」という呪文に縛りつけられていました。二十歳の誕生日、両親から「おまえもやっと二十歳になったんだな。ま、ゆるゆるとやることだ」と、励ましでも期待してるでもない、まことにぼんやりした祝福の言葉をかけてもらい、ひょっとして朽ち果てずにこれからも生きていけるかもと思っていまに至ります。
 ま、そのような経緯があったとして、なかったとして、真意は二度目の二十歳亭か、三度目の二十歳亭か、何度でも二十歳でいるメンバーにはこの名前もまた捨てがたく、候補としました。


贈陳商

長安有男児
二十心已朽
楞伽堆案前
楚辭繋肘後
人生有窮拙
日暮聊飲酒
祗今道已塞
何必須白首
淒淒陳述聖
披褐鉏俎豆
學為堯舜文
時人責衰寓
柴門車轍凍
日下楡影痩
黄昏訪我來
苦節青陽皺

李長吉歌詩集(岩波文庫)より

 杜甫は詩聖、李白は仙才、李賀(長吉)は鬼才と呼ばれていたその人ですから、いまもこの三人には脅えています。

【案四】
 飯門天。

 さてこそ、いかにせん。
by 2006awasaya | 2012-07-06 18:36 | 真剣!野良仕事


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