【真剣!野良仕事】[210=故人を偲ぶ写真が撮れましたよ]

2013.10.1(火)
その節はこの写真を肴に
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↑我ながら、うーん、いい写真だなあとホレボレする写真です。稲穂の抱え方も我が孫を抱くようで、うーん、至福の一葉ですね。

 人生で5回目のお米の収穫を終え、刈り取りを終えた田んぼで撮っていただいた写真です。9月22日〔日〕に最後の収穫を終えた折り、ハサ掛けで干したまっすぐに延びた稲穂一掴みを抱きかかえながら、メンバー各人がそれぞれ記念に撮っておきましょうという話になり、ひとりひとりで撮ったのです。
 気持ちよく晴れ渡ったこの日の天気も良よかったのか、人生の節目節目でさまざまに撮っていただいた写真のうちで、一番こころが晴れている写真が撮れたと自讃しています。
「はーい、とにかく、いい顔、してくださ〜い。美しい情景を思い出しながら、はーい、撮りますよ!」と声掛けしてくれたので、炎天下、全身を汗みずくにしながら草取りをしたこと、一本一本田植えしたこと、なかなかまっすぐに直線を維持できず曲がってしたった田植え機での田植えシーンなどを思い浮かべていたのです。

「アゴ引いて! はい、撮りました。はい、次の方どうぞ」
 つい2週間ほど前に免許更新で撮られた免許証写真と見比べると、いよいよもって我ながら、表情も硬からず柔らかからず、少しばかり誇らしげな人生が撮れていました。パスポートの写真も、免許証の写真も、この写真を使ってくれると嬉しいのですが。

 メールで送信されてきたこの写真を家族に見せましたら、妻は「お葬式の時って慌てて故人の写真を探しまわるよね、葬儀屋さんの一方的な指示があってから。ジイジの時は恭太の結婚式の時に撮った写真がすぐに見つかって、本人もいい写真だと言っていたことでもあるし、それを葬儀用に使ってもらったでしょ。焼香に来てくれた方々からも、いいお顔をされていますね、なんて言われたりしたことがあったでしょ。それと同じで、智昭さんの人生を振り返るにはいい写真だと思うな」と。
 故人を偲ぶ一枚の写真として、この写真を使って欲しいものだと、深く同意した次第です。この写真を肴に、「なんでまあ、あんなに米づくりに夢中になっちゃったか。人の行動ってのはなかなか判らないもんですなあ」とか「あれで日焼けを相当気にしていたようで、日焼け止めクリームをこまめに使ってたんだって。もともと色黒なんだから、気にするのはおかしいって本人に言ったことがあるんだ。そしたら急に機嫌が悪くなっちゃって、きっとセルフイメージは白皙の書斎派を願望していたのかしら」なんて、ひそひそ話をながながとしていただきたいものです。

 『徒然草』に「よき友三つあり。一つは物くるる友。二つには医師(くすし)。三つには知恵ある友」(117段)とあるそうで、それを下敷きに、芭蕉は笈日記に
米くるる友を今宵の月の客
と詠んでいます。
 加藤楸邨先生は、この「米くるる友」について、「実際にお米を携えて来た友と解すべきではなく、常日ごろ面倒を見てくれる友と心の中で言ったものであろう」とクギを刺しています。晩年に近い芭蕉には、よき友が多数いたんでしょうね。

 お米が繋ぐよき思い出。

 今秋もまた、よき友に恵まれて。
by 2006awasaya | 2013-10-01 15:08 | 真剣!野良仕事


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