釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁

2014.3.15(土)
釜山でうろうろ
부산에서 어슬렁어슬렁

釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17485016.jpg

↑国立金海博物館に近い古墳公園にて。このあたりが狗邪韓国、あるいは現代韓国では金官加羅と呼ばれる王族集団の中心地だったとか。

■凡一から国立金海博物館へ

 釜山(부산=プサン)に行ってきました。
 かねてから訪ねて見たい博物館がありましてね。
 国立金海博物館(국립김해박물관=クン二ップキメパンムルガン)と言うのです。釜山市西隣の金海市(김해시=キメシ)にあります。釜山市もここ数年の地下鉄路線網整備が進み、釜山の中心街から何回か乗り継ぐと約1時間弱で行けることがネット上でも確認でき、それで、この博物館に行ってみたいという思いがますます高まっていたのです。
 去年になってから、より詳しい情報を得ようと、国立金海博物館のホームページ(http://gimhae.museum.go.kr/)を覗くと、2013年4月から館内展示方法を全面的に改装するとかで、その工事に9月間かかると書かれていました。指を折ると昨年末か遅くても今年の年始早々には完了しているはずで、2月に入ったら行く準備を始めればいいかと、楽しみを先延ばしにしていたのです。
 ところが、楽しみは唐突にやってくるものですね。大学生になった息子の休みともちょうど重なったものですから、この2月下旬、便利な荷物持ちとして釜山に連れて行くことにしたのです。
 金海国際空港(김해국제공항=キメクッチェコンファン)から釜山市内のホテルに荷物を置き、一息入れてから夕食を兼ねて、地下鉄で西面(서면=ソミョン)へ。ホテルは地下鉄1号線の凡一駅(범일역=ポミルヨク)から歩いて5分と交通至便な位置にあり、凡一駅から西面駅までは2駅分の距離です。この西面という街は東京でいう新宿歌舞伎町のような繁華街で、ボクが行きたかった書店、教保文庫(교보문고=キョボムンゴ)釜山店も西面駅から歩いて10分ほどのところにあります。この書店はソウルのビジネス街・鐘路(종로=チョンノ)にもある全国展開の大型書店で、ここで釜山市域の地図、韓国全土の道路地図、それに韓国語の勉強を兼ねて料理ブックを購入しようと、レジで聞くと、かなり広い店内の奥の奥のほうを指さします。天井からは各ジャンルを示す案内プレートが下がっていますから、すぐに分かります。幸いなことに「料理(요리=ヨリ)」と「地図(지도=チド)」が同じところに並んでいました。料理のコーナーは日本と同様、健康指向が強く、食べてきれいになるとか、野菜中心のメニューで健康になろうとか、さまざまな企画本が平台に並び、どれも買って帰りたかったのですが、地図2冊だけでも大変な重さで、仕方なく、料理関連の本は1冊だけということにしました。お粥の本も清潔そうなレイアウトで、とても惹かれたのですが、地図帳よりも大型の本でしかも重い。その隣りにあった365種類のサラダの本にしました。レイアウトがきれいで、しかも全365ページで構成されているB5サイズの大型本、『365샐러드(サムベックユックシムオーセルロドゥ)』を15,800원で求め、腹を空かせた息子のために焼き肉屋さんへ。それにしても、まあ、なんてよく食うのでしょうか。

 釜山の地下鉄はホーム側にも転落防止シャッターがあるので、混雑していても線路に落ちることがなく、とても安心ですし、地下鉄の車内アナウンスも韓国語、日本語、英語の順で放送され、車内掲示用モニターも、東京の山手線車内のドア上モニターより大きなモニターがドア上ではなく、車内中央の天井近くにあるので、このモニターをちらちらと見ながら到着駅名をチェック。安心して移動できます。

 さて、西面でウナギとカルビを思いっきり食べた翌朝、近くのコンビニで購入したオニギリ(1個80円位)の朝食を済ませ、国立金海博物館へ急ぎました。地下鉄1号線で凡一駅から蓮山(연산=ヨンサン)駅へ。蓮山駅で3号線に乗り換え、大渚(대저=テジョ)駅へ。ここで再び軽鉄道線に乗り換え、博物館(박물관=パンムルガン)駅で下車。この軽鉄道線というのはほとんどが高架の鉄道で、眺めがとてもいいのです。地下鉄の駅構内も似たような造りになっていて、本を読むか、息子とおしゃべりをするか、このどちらかの選択しかないので、正直なところ、あまり面白い時間とはいえません。座席が空いて座っても、うっかり寝込んでしまったら、途端に「今はどこ、私はだれ」状態の迷子になってしまいます。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17493630.jpg

↑博物館駅で降り、見下ろす階段の先、支柱におばさんが座っていました。このおばさんに博物館への道を聞いたのです。

 凡一駅から乗り換えを2回して、1時間で博物館駅に到着。
 ホームから階段を下り、国立金海博物館へ向かいますが、場所がいまひとつよく分かりません。
 高架線はふつうのマンションの5階くらいの高さを走っていますので、地上に下りると、どっちが北か方角がチンプンカンプン。階段を下りた正面に高架線を支える円柱があり、その根元にうずくまるように腰を下ろしているおばあさんがいましたので、博物館の場所を聞いてみました。
「もしもし(여보세요=ヨボセヨ)。私、日本人です(저는 일본사람이에요=チョヌン イルボンサラミエヨ)。博物館に行きたいのです(박물관으로 가고 싶어요=パンムルガヌロ カゴシポヨ)。博物館はどこですか?(박물관은 어디이에요?=パンムルガヌン オディエヨ)」
 たどたどしくこのように問い掛けましたが、知らん顔をされてしまいました。
 やはりまだ、ボクの発音には問題があるのでしょう。あるいはボクのモノの尋ね方が上から目線だったからかもしれません。立ったままで突然「もしもし」ですから、礼儀を知らぬ無礼なヤツと思ったのかもしれません。
 腰をかがめて、同じ目線でもう一度きちんと挨拶をしてみました。きちんとしているかどうか、それはかなり怪しいのですが、ボクとしてはきちんと。
「こんにちは(안녕하세요=アンニョンハセヨ)、国立金海博物館はどちらにありますか(국립김해박물관은 어디에 있습니까?=クンニップ キメパンムルガヌン オディエ イッスムニッカ)。教えてください(가르쳐 주세요=カルチョ チュセヨ)」。
 するとまあ、「おやまあ、どうなさった?」といった軽い驚きの顔を浮かべてのち、手袋を脱いで人さし指で指し示してくれるではありませんか。確かに通じていたのですね。その指先の方角を見ると、写真で見たことのある煉瓦積みの四角い建物が、川の向かいの奥のほうに見えました。
「ありがとうございました(감사합니다=カムサハムニダ)。さよなら(안녕히 계세요=アンニョンイ ゲセヨ)」
 お礼を言い、河原に飛び石で置いてある石伝いに川を渡り、対岸へ。ああ、もうすぐ金海博物館です。うきうき。

■国立金海博物館から東莱へ

 舗道といい、車道といい、清掃がきれいになされています。舗道はカラータイルで、船橋でも住宅街や商店街にある吸水性のいいカラータイルでした。しばらく進むと、金海中学校があり、中学校の塀が切れ、その次が国立金海博物館の垣根が現われ、再び途切れ、付帯施設の通用門。この門から敷地内へ入っていけそうです。建物の正面に卵形の碑があります。うーん、このモニュメントは伽倻の建国神話に出てくる卵生神話の象徴なのかしら。首露王(수로왕=スロワン)が金の卵から生まれたことを表現しているんだろうな。卵の表面に「가야누리」と刻まれています。「カヤヌリ」と読めますが、「가야=カヤ」は文字通り「伽倻」でしょうね。「누리=ヌリ」は辞書を引くと「世の中」とありますから、「伽倻の世界」あるいは「伽倻の代」かな。辞書を持参してきてよかった。それにしてもこの書体はボクが大好きな書家さん、故・榊莫山先生のタッチそのものなんです。金海市にも、なんとも素晴しい書家さんがいるんですね。なんだかワクワクしてきました。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17501771.jpg

↑どうです、いい書体でしょ。榊莫山先生の書にそっくりでしょ。

 ところで、本題の伽倻についてです。
 日本では『三国志』魏志倭人伝に紹介されている国名・狗邪韓国が一般的なようです。
 魏志倭人伝では「郡より倭に至るには、海岸に循(したが)いて水行し韓国を歴(ふ)るに、乍(たちま)ち南し、乍(たちま)ち東し、その北岸、狗邪韓国に到る、七千余里」とあるように、帯方郡から韓半島を海岸線に沿ってたちまち東し、たちまち南し、狗邪韓国に到着。ここまで帯方郡から7000里。ここから先は海を渡って対馬に、壱岐にと飛び石を伝うようにして北九州へとコースをとった一行ですが、その渡海地点がこの狗邪韓国、すなわち伽倻なのでしょう(現代韓国では駕洛、金官加羅という日本語標記がガイドブックでも、日本語訳された韓国語のホームページでも多いようです)。
 韓半島を高句麗(고구려=コグリョ)、新羅(신라=シルラ)、百済(백제=ペクチェ)で三分し、韓半島最長の長江、洛東江(낙동강=ナクドンガン)下流域のわずかなスペースが伽倻に当たるエリアです。

「物部はいやな(587)やつだと蘇我氏いい」。

 日本史の年代を記憶する語呂合わせで、ボクは587年、物部氏滅亡と覚えたのでしたが、その滅亡に到る60年前に、伽倻からの救援要請を磐井に依頼し、拒絶されたところから勃発した「磐井戦争」が527年。このあたりの年代は、一度覚えると、なかなか忘れるものではありません。磐井戦争当時から韓半島では騒然としていたのでしょう。ついに新羅に侵攻されて、西暦562年に滅亡した伽倻国ですが、いま、そのほぼ中央に、ボクは立っている訳です。
 ここ伽倻の首露王陵がある位置は、関西エリアに置き換えると、大和川の河口から内陸へ遡って藤井寺か羽曳野あたりに該当するのではないでしょうか。背後に急峻な山を背負い、南は洛東江が作り出したデルタ。鉄器と海洋進出で栄えた伽倻の都です。卵形の碑を背景に、記念写真も撮りました。もうすぐそこが伽倻についての新規発掘展示をする博物館本館です。なんだかいよいよ本気でドキドキしてきました。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17511480.jpg

↑国立金海博物館のシンボルモニュメントがすぐ近くに見えています。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17511631.jpg

↑赤いカーテンで覆われているあたりが正面入口です。

 それにしても、今日が平日ということもありますが、見学者がほとんど見当たりません。そのかわり、静かな環境で館内見学できるのです。館内でいろいろ写真をとることになるでしょうから、受け付けで「写真を撮ってもいいですか?」の韓国語、「사진을 찍어도 돼요?=サジヌル チゴドテヨ」と、口からすらすらと出てくるように、何遍も何遍も繰り返し呟いていたのです。

「サジヌル チゴドテヨ」

 すぐ左手を見ると、駅を下りてすぐにあのおばあさんに教えてもらった方角に見えた煉瓦の塔のモニュメントが間近に見えます。「국립김해박물관」(国立金海博物館)と縦組みで書かれています。その背後に茶褐色で低層の建物も見えます。さらにその背後には荒い岩肌を見せる山岳が見え隠れしています。

「写真を撮ってもいいですか」

 再び正門まで移動し、館内略図と建物配置図を見直しました。配置図によると、目の前の幅の広い階段は館内見学を終え、下りてくる出口部分で、館内への正面入口はこの幅の広い階段左手の奥にあるはずなのですが、今は赤いシートで覆われています。それにしても人影がありません。

「사진을 찍어도 돼요?」

 赤いシートをめくり上げて内部を覗くと、何やら工事中。一部は足場が組まれていて、展示という雰囲気はどこにもありません。
 まさしく工事現場。しかも、ここにも人影がありません。仕方なく出口の階段を上がり、奥へと進みましたら、書類を抱えた少しばかり肥った女性がいましたので、「こんにちは(안녕하세요=アンニョンハセヨ)」と、元気よく挨拶をしたら、「日本語、大丈夫ですよ」と、ボクの挨拶言葉を聞いただけで日本人とわかったのでしょう、そんな優しい対応をしてくれる女性でした。

 そこで、得意の日本語で、「国立金海博物館を見学するために来たのですが、閑散としています。昨年春からの改修工事が未だ終わっておらず、開館出来てないということでしょうか」と、ちょっぴり不満そうに苦情を申し上げたところ、大変恐縮したように背を丸め、頭を下げて「そう、そうなのです。3月に入ったら開館出来る予定でいま工事中なのです」と。
「でも、ホームページをチェックしてきたのですが」と、さらに不満そうに訴えると、「あと数日後の開館なので、まだホームページには記載してなかったのです。それはお気の毒なことをしますね」と、抱えている書類をさらに抱え込むようにして事情を説明してくれるのです。「それはお気の毒さまでした」と言うところ、『それはお気の毒なことをしますね』と言う表現がなんともかわいらしく、すべてを許す気になってしまいました。日本語の慣用句でも、表現次第ではこんなにも新鮮な響きがあるのだと、感動してしまいました。

 さて、ここで恨み辛みの繰り言を言いつづけても、何の得にもなりません。
 そうと分かれば、おいしいものを食べに行って、気分転換といきましょうか。博物館が休館だったこと、まことに幸いながら、息子も責めてきません。
「よし、おいしいお好み焼きを食べに行こう!」
「なにそれ。肉じゃないの!昨日食ったのは牛だったけど、次は豚って言ってたじゃない、サムギョプなんとかって言うんだっけ」
「いやいや、サムギョプサルって正確に言えよ。ほら、言ってみな。聞いてんのか!ま、いいか。牡蠣やエビやらが気ままに乗ったお好み焼きで、トンネパジョン(동래파천)っていう、美味いお好み焼きがあるんだ。去年ソウルに行った時も食べたろ。油で揚げてあるから外側はカリっとしてるけど、中はふわトロ。細いネギがぎっしり敷き詰められてるから、とろけるように甘いんだ。あのパジョンの海鮮風。うまいよ、期待していいぞ。釜山大学を見に行くついででもあるし、そのすぐ近くの東莱(동래=トンネ)という街においしい店があって、ここからそこまでは約1時間。地下鉄を2度乗り換えるだけだから、おまえは寝てればいいよ」
「ああ、そうする」

 ここで注記ですが、ボク、ふだんの会話はとても穏やかな丁寧語を使うのですが、相手が自分の子どもだと、どうやら上から目線でモノを押し付けるようなぞんざいな物言いになるんです。蛇足ながら一言お断りしました。

■東莱パジョンからチャガルチ市場へ

 さて、電車の接続が思いのほか良くて、45分で東莱駅到着。トンネパジョンをおいしくいただき、ビールもいただき、金海博物館に次いで行きたかった海辺の市場、チャガルチ市場(자갈치시장=チャガルチシジャン)に向かいました。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17581935.jpg

↑これがトンネパジョンです。ビールがことのほか、おいしかったです。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_1758314.jpg

↑地下鉄から地上に出てきたところにこの看板。しっかりカタカナ表記もあり、なんの不安もありません。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17585196.jpg

↑これが農協ハナロマートの一階部分です。

 地下鉄1号線チャガルチ駅(자갈치역=チャガルチヨク)で降り、地上に出ると、すぐ目の前に「農協ハナロマート」がありました。ここでおみやげ用のワカメを購入し、海のほうへと移動。うーん、本当に潮の香りがしてきましたよ。交わされている言葉も、どことなく漁師っぽい。

 いやあ、凄い喧騒です。上野のアメ横の年の暮れでもこんな雑踏はなかなか出現しないだろうし、しかも上野の場合は高架下の一条ですが、こちらは何列もその横丁が入り組んでいるので、雑踏の流れに身を任せるしかないようです。あとで地図を見直しましたら、その雑踏は新東亜市場という市場で、そこをすり抜け、次に焼き魚の露店がつづく通りを抜けると、目指す市場にたどり着きました。日本語で「シーフード通り」と書かれている通りの海側が、全面ガラス張りのモダンな建物になったチャガルチ市場でした。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17591554.jpg

↑チャガルチの市場とビルを歩き回り、すっかり韓国っぽい雰囲気を漂わせています。写真の左手はすぐに海です。

 市場ビルの中は大ざっぱに言うと1階が区分けされた鮮魚店、2階が食堂になっていて、どこも大変な人出。地元船橋の中央市場でも、水産のコーナーでは独特の掛け声で「らっしゃい! えー、らっしゃい!」なんで唸るような叫ぶような発声をしていますが、こちらでもきっと「安いよ、安いよ」とか、「買わなきゃ損だよ、持ってきな」などと道行くひとに話し掛けているんだろうと思うと、ああ、意味も分からずニコニコしてはいかんと、館内を一巡して出てきてしまいました。

 そうだ、このチャガルチの市場ビルから海沿いに300mも東へ行くと、乾物専門の市場がありますので、そちらを見学してからホテルに引き返そうということになり、息子の同意も取りつけ、正面に釜山大橋とロッテデパートを遠見にしながら乾物横丁へと入って行きました。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_17595388.jpg

↑乾物横丁です。本当に人影がないんです。

 ところがどうしたことでしょう。乾物横丁には同じ間口の店先には店番もおらず、お客さんの姿もついに見ませんでした。猫の姿も見ませんでした。鮮魚のカジャルチではワラワラといた人影は、わずか200m、いえ、100m 離れただけで、閑散。閑古鳥。国立金海博物館状態です。

 乾物横丁は海苔の専門店、ワカメの専門店、スルメの専門店、カワハギの専門店、チリメンジャコの専門店という具合に、乾物の種類で一軒一軒別々に軒を連ねています。しかも道を挟んだ向かい合わせが同種の乾物を売る店で並んでいます。乾物につづいて、韓方医薬で使う材料を商う店がつづき、ロッテデパートで突き当たりとなりますが、ああ、ついに全長300mの乾物横丁では、お客さんはボクら二人だけでした。

 この乾物横丁のほぼ中央あたりがワカメゾーンで、そのうちの一軒の店先に、伝統的な乾物ワカメ(건미역=コンミヨック)を売っていたので、「これはいくらですか」(이건 얼마예요=イゴン オルマエヨ)と大きな声で店の奥にいたおじさん(아저씨=アジョシ)に声掛けしたら、日本語で「どうせ買うならこれのほうがいいよ」と、錆びた声が帰ってきました。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_180171.jpg

↑乾物横丁のほぼ中間点にあったワカメ専門店の店先。伝統的な乾燥ワカメを見つけ、店の奥にいたおじさんに声をかけました。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_1801368.jpg

↑これが伝統的な乾燥ワカメの十字縛りです。一番上の一行は국산수산물(クッサン スジャンムン=国産水産物)と書いてあります。その下は품명(プンミョン=品名)と書いてあり、건미역(コン ミヨック=乾燥ワカメ)と書かれています。その下、文字が大半蹴られていますが、원산지(ウォンサンヂ=原産地)と書かれていて、これは기장산(キジャンサン=機張産)と書かれていました。おじさんの話では、最近は中国産のワカメが入ってきていて、安いので困っていると言っていました。

ボク この十字に結ぶのが伝統的な乾燥ワカメの韓国スタイルだと聞いたんですが、現物を見たのはここが初めてでした。一つおいくらですか?
アジョシ 500ウオンだよ。水で戻すと10倍に膨れるから、大きめの桶でやるといい。それよりいいワカメがあるからおみやげにどう?
ボク 機張(기장=キジャン)のワカメですか?
アジョシ 機張のワカメもあるけど、ウォンドのワカメもいいもんだよ。おみやげにはそれがいい。
ボク 高いのですか?
アジョシ ああ、高いよ。
ボク いくらですか?
アジョシ 7000ウオン。
ボク 4つください。
アジョシ これはどうする?
ボク それも4つ。

 ああ、いい買い物をした。機張のワカメは日本でいうと三陸ワカメかな。ウォンドのワカメって、どこだか分からないけど、鳴門のワカメって感じなのかしら。もちろん、三方を海に面した韓国では、ワカメにもいろいろな名産地があり、それぞれの産地にはそれぞれの贔屓筋がいるんだろうな。ボクは一時期、房総半島の南端に近い内房の太房岬の館山湾側で獲れる大葉ワカメを贔屓にしたことがあったなあ。塩蔵ワカメだったなあ。それ以前には外房勝浦のワカメも贔屓にした時期があり、これも塩蔵ワカメだったなあ。つい最近は三陸ワカメを贔屓にし、食べて応援することにしていますが、気になるなあ。ウォンドってどこなんだろう。

 ホテルに帰って、買ったばかりの韓国全土地図で調べたら、全羅南道(전라남도=チョルラナムド)の南にある島で、済州島まで南へ100km、釜山まで東へ240km ほどに位置する島でした。すぐ西には干満の差が激しいことで知られている珍島があり、日本の佐世保九十九島周辺とよく似た多島海風景が広がる穏やかな一帯なのでした。序でに携帯mapで調べたら、日本名は「莞島」(원도=ウォンド)でした。

 で、結局、伽倻を中心に据えた古代韓国紀行のつもりで釜山を訪ねた今回は中途半端なワカメ報告「釜山でうろうろ=부산에서 어슬렁어슬렁(プサネソ オスルロンオスルロン」となってしまいましたので、出来るだけ早めに、捲土重来、国立金海博物館に再チャレンジするということで、アンニョンハセヨ。

釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_1805388.jpg

↑帰宅して、伝統的な乾燥ワカメがどんな程度のワカメか、食べてみないと分かりません。さっそく水で戻してみました。これは直径10センチ程度の乾燥ワカメです。
釜山でうろうろ부산에서 어슬렁어슬렁_f0099060_1811158.jpg

↑水で戻して半日、十字の縛りもほどけて、ボウルいっぱい。肉厚で日本でふつうに買うワカメと変わりありませんでしたが、これで50円ですから、日本国内産は価格競争に曝されると、いよいよ厳しいでしょうね。
by 2006awasaya | 2014-03-15 18:08 | 行ってきました報告


<< 【真剣!野良仕事】[217=J... 【真剣!野良仕事】[216=夢... >>