【真剣!野良仕事】[10=線虫]

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↑収穫前のニンジン畑。いまでは収穫はほとんどが機械で、手で掘るシーンはほとんど見かけない。
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↑ニンジン収穫後、何日かしての同じ畑。ホワホワの草が生えてきていた。はじめは雑草かと思ったが、雑草にしてはみな同じ葉の形をしているので、もう次の野菜の種を蒔き、それが芽を出し始めたのだろうかと思って見ていた。

病害虫の話

 お世話になっている畑のすぐお隣の畑、夏前には一面のニンジン畑だったものが、ニンジンの収穫を終え、畑全体を天に晒すようにしていたと思ったら、わずか2〜3週間でホワホワした双葉が顔を出し、やがて畑一面が草丈の低い牧草のような草に覆われました。ニンジン収穫後にこの牧草のような草の種を蒔いたのでしょうか。

 きっとご近所に酪農家がいて、飼料用の牧草でも植えているのかと思い、飯島さんに聞いてみました。

「よく気がつきましたね、まさしく牧草です。でも、牛の飼料にするわけではなく、もう少し伸びたら、トラクターで鋤き込んでしまうんです」
「え、どうして?」
「線虫って知ってます? 知らない? ええ、ふつうの人は知りません。ニンジンやダイコンなどの根菜類は、土壌の中にいる線虫の被害にあうと商品価値がなくなってしまうんです。例えばダイコンでは表面に白濁斑症状が現れ、やがて黒変して外観を損ない、商品価値を低下させる。ニンジンやゴボウでは品質低下だけでなく、収量の低下もでてくる。とにかく頭が痛いんです」

 話が専門領域に入り込みはじめて、こちらにははじめて聞く単語が飛び出し、飯島さんの話をまともに聞いていられない。頭に残らず素通し状態。この話題は帰ってから調べ直して、後日、ほんのり判った時点でもう一度、飯島さんに質問してみよう。

 そこで、話題を変えて、
「へえ、農家の方って、いろんな苦労があるんですね。病虫害の他に、日照不足とか、長雨とか、雹の被害とか。後継者問題も大きな課題でしたよね。ところで、いままでで一番の被害って、どんなのがあったんですか」
「収穫直前に雹にやられたのが一番かな」
「どんなだったですか」
「もう、目の前が真っ暗になりました」
「そんなことがあっても、仕事を続けなくちゃいけないんだから、農家の方って、精神的にもタフですね」 そんな会話でお茶を濁したことがありました。

 それから数週間をかけて、web上で「線虫」「牧草」そんな単語で検索してみましたら、線虫のこと、根菜類の病気のこと、その線虫被害を食い止めるにはどうしたらいいのか、そのようなことがぼんやりながら判ってきました。まったくwebというのは凄い凄い。

 キク科のマリーゴールドが線虫を駆除するとかの記事も目にした。そういえば畑の脇や農道にはキク科のお花が植えてあることが多く、農家の人ってお花が好きな人、多いなと思っていたけど、そう言う理由でお花を植えていたのかと、納得できる記事に巡り会ったりしているうちに、線虫と牧草についての論文にたどりついた。
 農林水産研究成果ライブラリー(http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/index.html)。

 その研究文献解題の整理番号no.24に「野菜の害虫」があり、線虫類-1ネコブセンチュウ(http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/kaidai/yasainogaityu2/24-8-1_h.html)を読むことができた。

 その「線虫類」を読むと、まず線虫の種類、分布について書かれている。つづいて線虫の生理と生態、線虫による野菜類の被害ときてやっと線虫の防除の話になる。

 防除には、
1=薬剤を使う化学的防除法。
2=天敵関係にある線虫捕食菌などを使う生物学的防除法。
3=蒸気消毒や熱水土壌消毒などによる物理学的防除法。

 以上の3つがあり、さらに、線虫類に対して抵抗力を持つ品種に接ぎ木をしたりして抵抗性品種として育てると言う考え方の抵抗性品種の利用、また、線虫に対抗できる植物の力を借りる対抗植物の利用、例えばギニアグラス、落花生、マリーゴールドなどが知られているが、それぞれがどのタイプの線虫に効果があるかはまた別の問題らしく、実際の場面ではなかなか研究成果どおりの結果にはなりにくいらしい。それこそ場数と経験則と勇気にかかってくるらしいのだが、研究と実際のイタチごっこという側面もあるらしい。人間の体内で繰り広げられている細菌と抗生物質とのイタチごっこと瓜二つ。

 ここで冒頭に戻って、ニンジンの収穫が済んだ後で、牧草が一面に波打っていた畑の話に戻る。あれはどんな名前の牧草だったのか。ギニアグラス? それとも別なイネ科の植物だったのか。

 さらにこんなページも興味深かった。
「矮性のクロタラリアの線虫密度低減効果と緑肥としての利用」
http://konarc.naro.affrc.go.jp/seikadb/06/6-18.html
 連作障害という言葉でボク自身は拒否反応を起こし、ああ、農作業って難解だし、それ以上にタフな肉体がないと出来ないと思い込んでしまったことがあったけど、その「連作障害」。

 つまり、同じ畑で同じ作物を作り続けると、病気になったり熟さなかったりで収穫量が落ちてくる、それを連作障害っていうんだけど、その障害の原因の大きなものに、この「線虫」がかかわっていたんだ。クロタラリアは落花生と同じくらいの線虫密度低減効果をもっていて、つまり、どんな畑にも線虫はいるが、その線虫の個体数、人間でいうと人口密度に相当する個体数がわずかになって、作物の生育にほとんど影響を与えなくなる程度の密度のことで、しかも、鋤き込むことにより、緑肥となる一石二鳥の植物。畑のサプリメントみたいなものかも。

 しかも従来のクロタラリアは人の背丈ほどに成長するが、これは名前の通り「矮性」ゆえに、人の腰くらいの背丈で成長を止める。これは鋤き込む際に作業を簡便化するという効果もある。
 さらに、鋤き込んだ後、ダイコンを植えた実績では収量が増加したと報告している。
 そう、化学肥料に頼らず、しかも病気も防げるとすると、牧草をはじめ、野菜づくりにはさまざまなものが貢献しているんだと言うことがだんだんとわかってくる。

 いずれにしろ、農薬を使わずに健康でおいしい野菜を育てると言うことの大変さだけは判ったような気になった。さらに、新聞を賑わせている残留農薬のポジティブリストについても、もう一度腰を据えて新聞記事などを読み返してみようと思った次第。(hasegawa tomoaki)
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↑そよぐ風は肌に感じても、なかなか姿を見ることができない。ところが、こうしたしなやかな牧草だと、はっきりとその姿が確認とれる。うれしくなってつい、見とれてしまうが、そうか牧草にはそんな働きがあったのかと、さらにさらに見とれてしまう。
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↑そよぐ風に見とれてからおよそ2週間くらい経っただろうか。あれれ、あのグリーンの畑がない! そうか! この写真のようにきれいに鋤き込まれて、次の作付けを待つばかりとなっていた。畑に近づいて見て見ると、鋤き込んだ状態がよく分かる。そういえば、この畑に限らず、季節の変わり目にはこのような牧草みたいな草が畑一面を覆っていたことを思い出す。船橋も八千代や印西に近くなると、放牧地が多くなるなあという印象を持ったことがあったが、そうか、牧草地ではなく、緑肥として牧草を蒔いていたのか。話は聞いてみないと判らないものだなあ。
by 2006awasaya | 2006-08-30 21:13 | 真剣!野良仕事


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