【真剣!野良仕事】[14=アフタヌーンティー in 落花生畑]

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↑サトイモの根回りに鍬を一振りする飯島さん。スイングに腰が入っているから、見ていて惚れ惚れ。
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↑指を指しているところが子イモ。この小イモから孫イモが出てくる。
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↑右手で持っているところがサトイモの種芋。この種芋の上に、大きな親イモができる。ちょうど左手で持っているところが親イモで、メインの茎はそこから地上へと伸びて大きな葉を繁らせる。

欠株の話

 畑に向かう小道の脇にサトイモが植わっていて、葉を大きく広げてユサユサと風に身を任せるように揺れていました。ちょうど先生の飯島さんがすぐ後ろから歩いてきたのをいいことに、
「飯島さん、サトイモってどんな具合にイモがついてるんですか?」と聞いてみましたら、「そんなことも知らないんだ!」と、言葉にこそ出しませんでしたが、相当な呆れ顔ですぐ近くのハウスにあった鋤を持ってきて、「ほんとうに知らないの?」と、今度ははっきりと確認するように言葉に出しながら、鍬を振り下ろして一株全部を起こして見せてくれました。

 根回り10センチといったところにグサッと鍬を入れ、グキッと起こすと、サトイモの株全体が地表に顔を出します。

「最近はほとんど機械で掘るので、こうして鍬を使って掘り起こすのって、結構しんどいなあ」といいながら、片手で茎の根元を持つと、いとも軽々と株全体を引き抜き、イモがなっている状態がよく見えるように見せてくれました。

「えーと、このイモが植えた種芋。この種芋のすぐ上にあるこの大きなイモが親イモで、その親イモのまわりに子イモがつくんです。これが小イモ。その小イモのまわりに孫イモがつく。サトイモがどうなっているのか、分かりましたか。そうだ、今度イモ煮会をやりましょう」と、話はどうしても美味しい方へと飛び跳ねていきますが、さて、今回はイモ煮会の主役を務めるサトイモの話ではなく、欠株の話。

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大先輩!シマさん

 ボクの農業の大先輩で、野良仕事の最中に分からないことがあったりしたら、すぐに聞ける! そんなふうに以前、飯島シマさんを紹介しましたが、シマさんご本人は迷惑な話だと思っているかもしれません。
畑で仕事をしているときに、いつも、こちらが一方的に話し掛け、手を休ませ、聞きたい話だけを聞き、「いやあ、そういうことでしたか。納得できました。ありがとうございました」と、一方的に話を切りあげ、畑をあとにする。ボクが立ち去ったあと、シマさんはどう思っているんだろう。
「なんてまあ、何にも知らないヒトだろう」と、心底そう思っているに違いないのは分かっていますが、次回お姿を見たときにでも確認をとってみようと、そんなことを考えながら、翌週にはもうそのあたりの反省をすっかり忘れ、「ところで、お聞きしたいことがあるんですが、いま、よろしいでしょうか。落花生の収穫時期はなにか茎が黒くなったり、葉っぱが黄色くなったりなど、落花生のほうからもう収穫できるぞ、なんていうサインがあるのでしょうか」と、話し掛けてしまうボク。だって、実に気さくに答えてくれるんですもの。

 先週、ダイコンと白菜とゴボウの新芽を間引いた話のなかで、間引いた苗を欠株しているマルチシートの穴に移植したことを書きましたが、このことについて、大先輩はどのように考えているのか、聞いてみたかったのです。
 
長谷川 マルチの穴に5〜6粒、ダイコンの種を蒔いて、一粒も芽を出さないところがあったんです。それで、蒔いた種全部が芽を出したところの1本を残して、余った4本を、芽を出さなかったマルチの穴に植えたんですが、それがどうも元気がなくて。農家の方はそういうとき、どうしてるんでしょうか?

シマ そういうときって、欠株になったときってこと? 農家はそんなこと、しないのよ。なんでしないのかというと、欠株に移植しても、まわりの葉にお日様を遮られたりして、成長が追いつかず、収穫の時期が遅れ、結局は無駄になってしまう。間引くってのはそういうことで、5〜6粒蒔けば悪くても2〜3の芽は出すもので、その中から元気のいいのを選んで残すっていうのが間引くってことの意味なんです。それに、移植する手間をかけても、経験的に出来が良くないってこと知っているから、欠株したところには別な、もっと成長の早いものを植えるんです。

長谷川 たとえば?

シマ 落花生の場合、畑の半分近くを落花生にしてありますが、2〜3カ所で芽が出ないで欠株になっています。そこには落花生より背の高い、成長の早いゴマを植えるんです。

長谷川 ああ、それで落花生の畑の中に、ぽつんぽつんとゴマが植わっているんですか。

シマ そう。先々週に花が咲いて、来週あたり、こぼれちゃうから、収穫しないとね。でも、落花生はまだ収穫時期には早い。落花生の隣りのサツマイモは苗を植えているので、そうそう欠株しない。種芋を植えるジャガイモも、欠株しない。

長谷川 収穫時期がまだ早いと言いましたが、地中の実りというか、成り具合をどうやって判断するんですか。

シマ 落花生は葉っぱが枯れてきたり、黒いシミのような斑点が出てくる。そうそう、その黒い斑点。そうしたら一つ二つ掘ってみる。それでもう少しとか、もういいとか判断する。サツマイモの場合は茎のあたりが赤くなってくる。サツマイモは一つが700グラム以上はダメだとか、1キロ以上の大きな物になると流通に乗らないとかで、なかなかむつかしいの。小さめで同じ大きさがたくさんなるのがいいんだけど、そうはいかない。

長谷川 大きくなりすぎたサツマイモは、そうするとみんな自家で消費するんですか?

シマ 一般の市場には乗らなくても、羊羹の材料になったりするから、無駄にはなりませんけどね。

長谷川 ああよかった。

 こんな風にして、畑の中で話は弾んでいくんです。そうだ、今度は魔法瓶にお茶でも入れて茶飲み話を聞こうっと。畑の中でアフタヌーンティーなんて、シャレてるなあ。

長谷川 ところで、落花生に去年はマルチをしたと言ってましたが、今年はなんでマルチをしていないんですか。

シマ マルチを張ると、土の中の温度が高まって、成りがよくなるんです。数が多く成るってことじゃなく、数は少なくても一つ一つが大きいのができる。でも、わたしはいっぱい成った方が嬉しいから、それでマルチを今年は張らずに露地でやったんです。露地でやった方が数がたくさん成るんで、面白いんです。なんとなく気分もいいし、それに面倒なくていいんです。マルチって面倒な作業であることは確かなんです。畝を作ってすぐに種を蒔いたり苗を植えたりする前に、マルチシートをかぶせるという作業がある訳です。収穫する前にも、マルチをはずさなくてはいけないし、およそ面倒なんですよ。

長谷川 えー!収穫する前にマルチ、はずすんですか?

シマ そうしないと機械が入らない。サトイモもサツマイモも、茎と葉っぱを切り払って、それからマルチを剥がし、それで機械を入れて収穫。

長谷川 そんな手間がかかるんですか、マルチシートって。で、落花生ですが、落花生は花が咲いて、その花の基にある子房で受粉して、そこから子房柄が伸びて、やがて土の中に突き刺さって膨らみ、豆ができる。これでよかったでしょうか。

シマ ええ、その通りだと思いますよ。

長谷川 マルチをすると、その子房柄は地中に潜れないんじゃないんですか?

シマ いえいえ、ずんずんとマルチを突き破って土の中に入っていきます。私の落花生がちょうどいまが収穫で、掘りたての生ラッカ、これがおいしいんです。最近はお店にも出回っていますが、掘りたてを茹でて食べてご覧なさい、ほんとうにおいしいんだから。

長谷川 どんな茹で方をすればいいんですか?

シマ 掘りたてを水で洗って、濃いめの塩水で40分くらい茹でるんです。あと引き豆っていうの、分かりますよ。おいしいです。

長谷川 そうそう、生ラッカがうまいからって、今年の春、飯島さんが落花生を植えることをすすめてくれたんでした。どんなにうまいか、もうすぐボクの畑でも収穫ができるので、うれしいな。いやあ、どうも、長々とおしゃべりしてしまって。それじゃあ、またお話聞かせてください。ありがとうございました。

 シマさんは今年89歳。昔のこともつい最近のことも実によく知っていて、次回のおしゃべりは戦前戦後の船橋のことなどを聞いてみよう。(hasegawa tomoaki)
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↑船橋はアサリも有名で、駅前にアサリ売りのおばさんが各所に並ぶ。東武船橋駅の側にも出るが、JR船橋駅の南口を出て左に回り、向かいのフェイスに渡る信号機の下あたりに店を出すおばさんのアサリが実にぷっくりしておいしい。そのおばさんは「砂抜きはしてあるけど、少し多めの塩をたっぷり入れた塩水に、食べる前1時間くらい浸けておくと、完璧に砂抜きができるよ」と、必ずアドバイスしてくれる。酒蒸しが最高に美味い。飯島さんにいただいた生ラッカをさっそく茹でた。アサリの砂抜きに使う濃さの塩水で40-50分、茹でる。殻を割って出てくるこの甘皮が絶妙に塩っぱく、あとを引く美味さだ。ああ、はやく自分で作った落花生でこのあとを引く美味さを味わいたい。

飯島さんからの追伸
コメント=1
サトイモを掘り起こしている写真に映っていなくてよかったのですが、ふつう、サトイモは3本万能とか4本万能と呼んでいる鍬を使うんです。農家の方がこの写真を見たら、きっとおかしなことしてるなあと思うだろうなと、試し掘りをしたあとで思い返していたんです。あのとき、農具を置いておくハウスには、平べったい普通の鍬しかなかったので、それでサトイモを起こしたんですが、実際の農作業としてサトイモ掘りをするとしたら、作業能率からいっても4本万能を使うんです。万能って、なんて言ったらいいかなあ、手元の広辞苑で調べると、「除草に用いる農具」とあり、「10センチくらいの扁平または円くとがった歯に柄をはめたもの」という説明がしてありますが、水田で使う田起こし用の備中鍬に似た鍬なんです。でも、言葉で説明しても、ほとんど分からないと思います。それで思ったのですが、農具のことって、みなさん案外知らないので、こんど畑で集中講義でもしようかと思います。
コメント=2
ダイコンを間引いて、その間引いた苗は捨てずに食べてくださいって作業の段取りに書きましたが、それは間引いた苗を植え直しても、ほとんど根付かないから無駄だといったんです。もちろんなかには根付くのもあると思います。でもほとんど根付かないのは、引き抜くときに、細かな眼には見えないような細い根をプツプツと切ってしまうからなんです。慎重に引き抜いても、どうしても細い根を切ってしまいます。白菜は植え直しに比較的強いんです。ブロッコリーも比較的強い方です。それぞれ、野菜の種類によって微妙に違っているんですね。
by 2006awasaya | 2006-10-04 00:31 | 真剣!野良仕事


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