【真剣!野良仕事】[80=アイガモ農法☆管見記=2]

2008.6.11(水)
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↑昨年2007.5.12に飯島農園の田植えに参加されていた松丸さん。
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↑2008.6.9にお会いした松丸さん。
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↑松丸さんの田んぼの畦道で毛繕いに熱中するアイガモたち。山田農場で放鳥したアイガモたちが幼稚園の年少さんだとすると、こちらのアイガモたちは仲間内でしか通用しない言語を駆使しておしゃべりに熱中する高校生って感じ。鳥の世界の成長曲線はドッグイヤーどころか、もっともっと急カーブの成長曲線を記録しているかも。

遊び心でアイガモ農法に取り組む

 アイガモ連鎖とでも言ったらいいのか、アイガモがアイガモを呼ぶと言ったらいいのか、アイガモが頭から離れないと言うのか、アイガモがついて回っているようです。

 この近辺ではアイガモは山田勇一郎さんだけだと思っていたら、飯島さんがうすうす笑いしながら近寄って来て、声を潜めて耳元でこう言うんです。

「いやあ、偶然としか言いようがないんですが、アイガモ農法にチャレンジしている仲間がもう一人いたんですわ。山田青年は初めての田んぼで初めてのアイガモですが、これから紹介する方はもう3年も田んぼをやっていて、しかも休耕田を積極的に引き受けて再生している方なんです。何かの折に今年はアイガモでやるってことを聞いて、なんだか今年はアイガモ元年のような、嬉しい年になりそうですわ」と、表情を崩す。

 そしてです。山田さんの放鳥会が滞りなく済んだその晩、飯島さんから電話があり、「明日、アイガモの方に会いに行くんですが、長谷川さん、ご一緒しない?」と。
 聞くと、印旛沼の近くらしい。印旛村岩戸。アイガモ農法の方は松丸秀一さんとおっしゃるとか。
「え、同行させていただけるんですか。スケジュールならどうにでも調整しますから、ぜひ連れてってください」と二つ返事。

 そして、6月9日(月)の朝9時に好人舍で待ち合わせ、飯島さんの車で印旛村の松丸さんの田んぼに向かったのです。好人舍のある船橋市豊富から車で約30分。松丸さんの田んぼがある印旛村は、ボクの先入観では平坦で見晴るかす限り沃野の田んぼ。田んぼの一枚が異様の大きく、ちまちまクネクネした区画はおよそない大規模水田。ところが、実際に助手席からの風景は起伏にとんだ谷地の連続する地形で、目指す松丸さんのアイガモ田んぼは農道の脇の、周囲を森に抱かれるような里山にありました。ぐるりをネットで囲んでいるのと、カラス除けのテグスが田の上に張っているので、アイガモ農法の田んぼだとすぐに分かります。

 農道から脇によれ、車を止めて田に近づくと、アイガモたちは6、7羽が一塊となって畦道で丸くなって毛繕い中。人の気配はありません。すると、はるか先を指差して、「あのこんもりとした森が見えますか。人家が2、3軒固まって見えるあたりですが、あの森の上に松丸さんの家があって、あそこからは眼下一望、羨ましいほどの眺望をほしいままにできるんです。われわれがここにきたことは向こうからは丸見えで、もう少しすると松丸さんは降りてくると思いますよ」

 飯島さんの言う通り、5分もしないうちに車で降りて来た。

 ボク、どこかでお会いしたことがあるなあと、そんな気がしたんですが、なにせ生まれて初めての印旛村です。人違いだろうと、迂闊にも「はじめまして」なんて挨拶をしてしまった。

 実は昨年の5月12日(土)に飯島農園の田植え会で初めて田植機を操縦し、数条の苗を植えたには植えたのですが、どうにもこのフローティング一輪車の田植機がうまく操作できず、結局、手で植えた方が早く、このときボク、落胆して畦道に敷かれたブルーシートに崩れ込み、自分のふがいなさを恥じていたのですが、このブルーシートには田植えを終えた先客が体を休めていて、その座り方というか、腰のおろし方がなんとも様になっていて、見るからにその姿が素敵で、それで初対面の方の前で濃いため息をついてしまった照れ隠しで「田植えを済ませた後は気分もいいですね。ボクは初めての経験で、満足に田植機がまっすぐに進まず、疲労困憊してリタイアさせていただいたんですが、早苗をバックに、写真を撮らせていただけますか」なんてしゃべりかけると、実に気さくに「ああ、どうぞどうぞ」。それでここに紹介した写真となったのですが、その方がこの松丸さんだったのです。でも、そうと分かったのは、これを書いている今。1年前の写真ストックを見返していたら、ああ、やはり松丸さんだった。お恥ずかしい。

 さて、アイガモ農法。現場にて松丸さんから聞いた話をまとめると、ここのアイガモは5月2日産まれの100羽を放鳥。6月8日に放鳥した山田さんのアイガモよりおよそ1カ月先輩。もうすでに立派な一人前の姿形をしている。

「今年は異常に寒かったりで、苗の生育が思わしくなく、予定では、アイガモのヒナが到着する1週間前には田植えが完了していて、しっかり根付いたところで孵ったばかりのヒナを放つ計画を立てていたんです。ところが、アイガモが予定通りの日に到着しても、肝心の田んぼができていない。なんと、田植えを済ませたのが5月20日でした。その間、家の中でアイガモを育てていまして、なかなかかわいいもんだなあと見とれて過ごしたもんです。やっと田んぼができたので、一斉に放したら、あっという間に除草はしてくれるは、虫取りはやってのけるは、とにかく元気な100羽なんです。稲の苗は食べないって話でしたが、食べるものがなくなると、風で倒れたり、自分たちが倒してしまった苗は食べるし、物の本などに載っているアイガモの生態とはやはり違う。これは生まれてすぐのアイガモだったら苗は食べないんでしょうけど、うちの場合は産まれてから20日も経ってのアイガモなので、倒れた苗は食べちゃう。でも、見ていて飽きないですね」と表情を緩めっ放し。

長谷川 ふつうは田植えを済ませた後は、しばらくの間は休養時間で、田んぼ農家は何する訳でもなく、のんびりとしばしの時間を楽しむと聞いていたんですが、アイガモ農家はどんな具合でしょうか。すべてをアイガモがやってくれるので、もっともっとヒマをしてられるんでしょうか。
松丸 正直、こんなにアイガモが気になるとは思っても見ませんでしたよ。田んぼの見回りをかねて、朝昼晩とアイガモはどうしてるかな、雨が降ってくると、濡れて寒がっていないかな、しっかり毛繕いができてるかな、そんなことが気になって、田んぼまで降りて行くんです。去年までと比べると、結構田んぼにいる時間も多いですね。
長谷川 ところで、なんでアイガモ農法に取り組んだんでしょうか。
松丸 この辺りではまだ誰もやっていないから。だれもやってないことに挑戦してみたかったんでしょうね。休耕田の復活に挑戦し、一株あたりの本数を極端に少なく植える「疎植」も試してみたし。今年はアイガモに挑戦したという訳です。近所ではきっと、何やってんだとか、どうせ巧くはいかんべえ、なんて思って見ていると思いますよ。でも、全くその通りで、アイガモ農法は所詮アソビですよね。遊び心がなくちゃ、できやしません。採算一辺倒だったら、こんな手間のかかる農法、やりゃあしません。でもね、考えてみれば、除草剤は必要ないし、安全な米はできるだろうし、田んぼにだって負担を強いることはなく、水も汚すことはない。しかも秋、大きくなったアイガモが専門業者に売れたら、それはそれで嬉しいことだし、今年これで巧くいったら、きっと近所にもやる人間は出て来るんじゃないかなあ。ゆくゆくは地域の村おこしに繋がればいいなあと、そんな風に考えているんです。
長谷川 さっき苗も食べちゃうって言ってましたが、どれが食べられた苗ですか。
松丸 苗の先っちょが尖ってない苗、分かります? あれがアイガモにつままれた苗です。でも、これから気温が上がって来て、苗の分蘗が盛んになれば、そんなこともたいしたことじゃなくなると思いますよ。それより、帰りがけにアイガモ農法じゃない田んぼを見て行ってください。苗の葉っぱが白っぽくなっている苗がいっぱいあると思います。泥負い虫の仕業なんですが、アイガモの田んぼの苗はそんな白っぽい苗は1本も見当たりません。泥負い虫は深刻なダメージを与えるって話は聞いてませんが、稲にはよい訳がない。うちのはアイガモがつまんで食べてくれているから実に健康的な苗になっているんです。
長谷川 アイガモにはエサは必要ないんでしょうか。
松丸 うちじゃあ、屑米をやってるよ。今はその他に飼料用のエサもやってる。あいつら、エサを啄んではすぐに田んぼに降りて行って水を飲み、またあがって来てエサをついばんでまた水を飲みに行く。物の本にはそんなエサは食べないというか、食べられないって書いてあったけど、食べるものが田んぼになくなれば、やはりエサは必要だわな。
長谷川 昨日、山田農場のアイガモ放鳥を見に行ったんですが、そこで、山田さんが参加者に「人が顔を見せる田んぼにはカラスもイタチも寄り付かない」って言ってましたが、そんなものでしょうか。
松丸 全くその通りです。うちの田んぼはご覧の通り、ネットをまわし、テグスを張ってあるだけですが、いまのところ外敵からの被害はありません。ただし、ネットを田んぼの内側の水の中に張ったんで、なかには水に潜ってネットをかいくぐり、脱走する元気者もいて、団体行動をする律義者というイメージがありますが、多分、一匹一匹個性があるんでしょうね。

 松丸さんの田んぼがある「印旛村岩戸」をグーグルで検索し、地図で確認した。印旛沼の西側、新川と呼んでもいいくらいに細くなった印旛沼が確認できた。いつもは「地図」で見ているだけが、「航空写真」で見てみたら、近くにゴルフ場が見える。それがまるで緑の大地が害虫に食い荒らされ、蚕食されているように見えた。

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↑田んぼの畦道の左右ともにアイガモが自由に行き来できる。写真の奥に見えるのがアイガモ舍で、雨の日はこの小屋の中で羽を休めている。
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↑一番手前の苗が、先っちょをアイガモにつままれた苗。この写真は左方向にアイガモの一団が泳いで移動した後。すると、ご覧のように水がにごっている。「毎日毎日、アイガモたちの水掻きでかき回されてれば、雑草の種が根つかない訳だよね」と松丸さん。
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↑「さあ、エサの時間だよ」とアイガモ小屋に向かう松丸さん。毛繕いをしていたアイガモたちは一斉に田んぼの中へ移動し、再び泳ぎ回ってアイガモ小屋に集まってくる。
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↑田の畦で屑米をまく。
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↑エサはこんな感じ。
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↑これが泥負い虫の被害にあった苗。葉の先に小さな泥のかたまりが見えるが、これが泥負い虫。
by 2006awasaya | 2008-06-14 22:53 | 真剣!野良仕事


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