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稲の観察記録[第27回・最終回]

2007.11.21
稲の観察記録[第27回・最終回]
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安藤 とうとう最後の回となった。季節はめぐって冬となり、もうお正月が目の前だ。
 かねてからこの時期に計画していた鋸山(のこぎりやま)登山にA子とその弟S男を連れて出かける。空気が澄みきって遠く箱根、伊豆そして富士山が望めたが、風が強くロープウエイは欠航。全行程を歩くことになった。「鋸山に行ったら、しめ飾りに丁度いい葉っぱがあるかもしれない」というのも、この登山のもう一つの目的だった。
 歩きながら葉っぱを見つくろい、一枝二枝いただいて新聞紙にはさみ、持ち帰った。それをしめ飾りにつけて、すべて完成とした。あとは玄関に飾ってお正月を待つばかりだ。

 ここでA子の観察記録は終わっている。この活動はA子にとって得がたい体験となった。
 それは稲を育て、収穫し、ご飯を炊いて食べ、しめ飾りを作ったという農業体験なのだが、同時に春からの日々の観察を記録する地道な活動があって、それが積みあがり、秋を過ぎる頃には立派な作品となって結実したのである。この作品を前にして、私はA子に「やっと完成したね。大事にしておかなくっちゃ」とだけ言った。
 そしてまためぐってきた春。弟のS男が1年に入学し、「今度はボクがイネをやる」とはり切って言った。それを聞いてA子と私はにっこり笑った。(終)


飯島 稲の苗を手にした時は、一年間こんなにいろんなことがあるとは、考えもしなかったでしょうね。私もあらためて、稲のチカラを感じることができました。ありがとうございました。
 我が家の田んぼでは、家族で10数年稲づくりを続けている人たちがいます。
 曲がりくねった田植えをしていても、朝食べたご飯がこの田植えでできると思えば、次からまっすぐになったり、暑い暑い夏の草取り、稲刈りもへとへとになるまで耐えられ、台風で稲がながされれば、何百メートルもぬれた稲を担いだりもできます。雨降りがせまるなかでの脱穀は休むこともできません。私も、稲づくりを始めたころは、何をやっても時間がかかり、出来栄えもうまくはなったですが、今はすっかり隣の農家と同じようにできるようになりました。
 稲の育ちだけでなく、お日様や風、虫や、そうそうウサギが飛び出してきたこともあったなあ・・・・・・。
 毎日食べて、体を創って動くエネルギーになるご飯。お米がどうしてできるのか知ったとき、ものの見方がいろいろ分かるようになってきたのではないかなあ。食べるだけでなく、わらが縄になったり、精米してできた糠(ぬか)が野菜の肥料になったり、油ができたり、また、田んぼが、川が増水したときのダムになったりなどを知ると、もっともっと稲づくりがおもしろくなると思います。
 今度は、実際の田んぼで、稲つくり、お米づくりしょう!
by 2006awasaya | 2007-11-21 09:17 | 稲の観察記録

【真剣!野良仕事】[56=おいしい野菜公園のロゴ顛末記]

賞品の行方は?

 昨年2006年暮れの忘年会で飯島さんから提案のあった「おいしい野菜公園」構想。
 はや、あれから1年が経とうとしています。「毎週末に楽しく農作業に興じていたら、もう一年が過ぎていた!」というのがボクの実感です。
 また、この春に坂本さんから「おいしい野菜公園」会則原案も示されましたが、未だ議論は熟さず、走馬灯のように各人の胸の中で映し出された夢が駆け巡っています。醒めない夢を見続けていると言ったらいいのか、見果てぬ夢を見ていると言ったらいいのか、あるいはいっとき燃え盛った焚き火の火勢が衰えて、それでも性懲りもなく燻っていると言ったらいいのか。
 メンバーのこうした温度差と言うか、気分を察してか、飯島さんから回覧メールが10月29日(月)23:35に発信されてきました。

[おいしい野菜公園2007のロゴをデザインして下さい。カラーでできるといいですね。作品には氏名とそのこころを添えて下さい。応募は11月2日(金)の締め切りとします。応募された作品は3日(土)にグループメールと好人舎にて見られるようにします。選定は3日の昼のミーティングで行ないます。採用者には賞品として『葉摘みしない五輪久保リンゴ1ケース』の贈呈]

 締め切りまで5日です。なんとも性急な要求ですが、真っ先に応募したのはだれあろう長谷川でした。
 その心は、「一番始めに応募することが大切で、クオリティは二の次」というのがボクの考え方で、飯島さんからのmailが送信されてから、さてどんなものがいいのか、うつうつと考え込んだりしていたのです。そして翌々日の10月31日にグループメールのブリーフケースにボックスイン。内容はどうあれ、一番乗り!

 その後も阿部さん、鷹島さん、大竹さん、坂本さん、小林靖さんがエントリーし、審査当日を迎えました。

 審査当日11月3日(土)の午前中、飯山満南小学校3年生とその父兄、引率の先生2名によるブロッコリーの虫取りがあり、その手伝いをしてから竹林にて昼食をとりながらの審査となりました。
 飯島さんの挨拶があり、下に掲げた写真のように、エントリーしたご本人が自作に付いて説明します。色にこだわりを持った方、色よりも形を重視する方、文字の字源にこだわる方と、ああ、人生の達人なんだなあと、その説明を聞きながら各人の思い入れを味わっていました。

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↑ボードを支えながら司会進行を担当する飯島さん。農業公園の理念からその将来展望まで広く深く自作のロゴの拠ってきたるよしなしごとについて説明する坂本さん。左手前の背中姿は各人の説明を腕組みして聞く松本さん。

 ひとわたり説明が終わり、では、これで選考課程に進み、ロゴとして決められれば決めましょうかという段になって、飯島さんの息子さん、竜平さんがもじもじしています。このロゴ募集について、竜平さんは知らなかったのです。
 その様を、まるで慈父のような眼差しで見つめていた松本さんが腕組みを解いてさっと手を挙げ、
「飯島さん! 竜平君のエントリー参加があったほうが公平だと思うんで、飯島さん、もう一週間、延ばしませんか。自分もエントリーしたいし」と言うのです。
 こんな一言、なかなか言えるものじゃありません。さすがですね、松本さん。
 で、この日、ロゴ決定は延期され、審査は11月10日(土)になり、さらにこのロゴ審査の週末は破天荒な雨天となり、出席できない参加者が多数になるだろうとの理由から、11月17日(土)になったのでした。

 ところで、ここで竜平さんのことを紹介しておきましょうか。
 かれは飯島さんの三男で、人生の分岐に立ったとき、デザインの道に進もうか、音楽の道に進もうか、股裂きにあったらしい。同年代の青年たちと共同で農作業ができるような集団を作ろうと言うcoolな熱き思いを抱きつつ、ストリートミュージックに燃える若者で、いまは父を支えながら農業に従事しているので、「あったらしい」と、遠い過去の事例のように始末を付けて言うのは大いにヘンで、精神はいまも股裂きに遭っているとか。父である幸三郎さんの跡を継がなければいけないのか、それともGoing my way!自分は自分の思うままに歩んでよいものか! 永遠のテーマである「父と子の葛藤」を抱えて野良に立っているのです。
 飯島さんにすれば、身内がしゃしゃり出るのはまずかろうと言う思いもあってか、声をかけなかったに違いなく、その辺りを察しての松本さんの一言ではなかったか。

 話がどんどんと長引いて、閑話休題。
 いきなり11月17日(土)の審査会場へと話は移ります。
 2週間前と同様、好人舍裏の竹林ランチテーブルに作品が並べられています。それぞれの作品に番号が振られ、出席メンバー16名による無記名一人一票投票です。国会だと白と青だったか、色付きの短冊の木片で投票しますが、竹林では5センチ四方に切られたチラシに作品番号を記入し、二つ折りにしてお菓子箱のふたに投票します。坂本さんだけは最後の最後までだれに入れたものか、迷いに迷っての投票となったのですが、「時間をかけて丁寧に作品に仕上げて応募してくれたのですから、投票するこちらもそのイキを汲み取らない訳にはいきません。もうすこし考えさせてください」ときっぱり。

 結果だけを公表しましょう。
  阿部さん9票
  竜平さん4票
  松本さん2票
  小林靖さん1票
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↑多くの支持を集めた作品を手にする阿部さん

 投票に移る前に、長谷川から以下のようなことを提案させていただきました。
「大方の予想では2作品が前評判もよく、社会一般の通念ではトップ当選の作品をロゴに使うと言うのが当たり前なのでしょうが、フトコロの広さを誇示する意味でも、われわれ農好人は上位2作品をケースbyケースで使うと言うのはいかがでしょうか」と。
 一同拍手をもってのご賛同をいただきましたので、ここに2作品を掲載することにいたします。
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               ↑阿部さんの作品
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               ↑竜平さんの作品
by 2006awasaya | 2007-11-20 18:45 | 真剣!野良仕事

【真剣!野良仕事】[55=アロマアーティスト]

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↑ビズ2007.12[冬号]に紹介されていたアロマアーティストの吉本フジ子さんを紹介するページ。右ページの飯島さんがスリムに写っていて、映画「Shall we dance?」の里山バージョンを見るよう。左ページに紹介されているバジルのパスタもおいしかった!

アロマアーティスト・吉本フジ子さん

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↑腰にゼラニウム、手にはハーブを乗せた笊を持つ吉本さん。
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↑美しく配置されたハーブ。

 デジカメで畑の出来事をパシャパシャと撮っていますが、なかなか整理が追いつかず、月別のホルダーに収容したまま。たまに日記帳をめくるように見返していますが、あれれ、こんなシーンを撮ってあったんだという一枚に出会った途端、記憶が蘇ってきます。デジカメって、撮影日時から時間まで記録していますから、時系列で並べ直すと、さらに記憶がはっきりとしてきます。絵日記代わりとしてもとっても便利。
 さて、9月のホルダーを開いてストック写真をスライドショーにして見ていました。9月15日、畑ではエダマメの収穫が盛りだった頃ですが、吉本さんがハーブ園の一画で笊に各種のハーブを乗せています。ボクの知識では、笊の左手前の紫蘇はハーブなんていうシャレた範疇には入ってないんですが、吉本さんが言うには、これも立派なハーブなんですって。
 そのときは吉本さんの腰に差してあるゼラニウムに目が釘付けて、笊の上に美しく配置されたハーブには注意が及びませんでした。

長谷川 お腰に付けた吉備団子じゃありませんが、その腰に付けたゼラニウム姿の写真、撮らせていただけますか。
吉 本 あはは。いやですよ。
長谷川 でも、とっても絵になるんですが、どうしてもダメでしょうか。
吉 本 うふふ。構いませんよ。

 そんなおしゃべりを交わしてから、「ついでといってはなんですが、その笊を持った写真も撮らせてください」ってお願いして写真を撮らせていただきました。

 そして昨日、11月17日(土)の昼食の折、このハーブ笊の写真が雑誌ビズ(ベネッセ刊)に大きく載っていて、そうそう、そういえば2カ月前、雑誌の撮影と言うことで、ハーブ園や竹林で様々なシーンを撮影していたことを思い出しました。
 ふだん、ボクは吉本さんを「吉本さ〜ん」なんて気軽に呼んでますが、誌面ではアロマアーティストと紹介されています。今後はちゃんと「吉本先生」って呼ばなくちゃ罰が当たります。
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↑ハーブ園にはこんなレイアウトでこんなにたくさんの種類のハーブが植えられています。
by 2006awasaya | 2007-11-18 22:12 | 真剣!野良仕事

【真剣!野良仕事】[54=もってのほか]

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↑ピンクが「もってのほか」。上はヤハトウリの漬け物。左はヤーコンのフレンチドレッシング和え。

ほのぼのとした甘みの極品酢の物

 11月17日(土)、ブロッコリーの虫取りを済ませ、鷹島さん、井上さん、東海林さん、大内さんと好人舍に引き上げてきて、さて、お昼にしましょうと、竹林のランチテーブルに腰を下ろすと、庄内出身の阿部さんが「お昼に摘んで!」と、「もってのほか」を振る舞ってくれた。食用菊の中でも幻と言われる食用菊。酒田、鶴岡の二都からなる庄内でほとんど消費され、山形県内にも滅多に出回らない稀少品なのだ。
 しゃきしゃきして、ごく一般の食用菊の食感より優れている。庄内ご出身の阿部さんの味付けはほのかに甘く、「ああ、これが藤沢周平先生の海坂藩の味付けか」と、なんだか自分が下級武士になったような面持ちでこの珍味をしみじみといただく。

長谷川  阿部さん、これの作り方、教えてください。
阿 部  教えるもなにも。
長谷川  菊の花びらをどうするんです? 引きちぎっちゃえばいいんですか?
阿 部  花びらのかなめになっている額の部分をはずすと、ばらばらになりますよね。ばらばらにしてから沸騰したお鍋に入れて軽く湯がきます。
長谷川  どれくらいの時間?
阿 部  そうねえ、測ったことないけど、ほんの少し。煮るんじゃなく、軽く湯がくの。そうそう、お湯にはお酢を少し入れると、この優しいピンクが鮮やかになるから、沸騰する前にお酢を少々ね。湯がいたら醒ましておくの。三杯酢はわかるでしょ。各家庭でそれぞれ違うでしょうが、一般的には酢大さじ1、醤油小さじ1、砂糖小さじ2、私はこれにダシを少々入れるの。

 畑からの帰りがけ、スーパーに寄ったら食用菊が目に付いたので、さっそく購入。お豆腐一丁くらいの大きさのパックで120円と安かった!
 で、さっそくやってみました。美味しくできましたよ、阿部さん。
 でも、意味シンな名前「もってのほか」に、ひょっとしたら、庄内弁が隠されているのかと、書棚にあった庄内方言集『おらが庄内弁』(佐藤俊男著)を繙く。
 も、もつ、もった、もっち、と。
【もっちゃらくっちゃら】乱雑。もみくちゃの意。
【もってがら】時間を置いてから。[すこし「もってがら」食べれ]。
【もってつける】いかにも有り難く思わせるような感じを相手に与える。
【もってね】もったいない。
【もってぶる】勿体振る、いかにも有り難く思わせるような感じを相手に与える。
【もつのぎ】たぶの木。
 ああ、通り越してしまった。
「もってね」でもないだろうし、「もってがら」だと別な意味になってしまうし、やはり、通説通り、「皇室の御紋である菊の花を食べるとはもってのほか!」に落ち着くのかしら。「逆引き庄内弁」があれば、「とんでもない」、「畏れ多い」など意味から逆に実際の方言使用例にたどり着けるのに、ああ、残念。逆引き広辞苑なみに、これからは方言集が逆引きが標準仕様となるよう、切にお願いいたします。
 でも、そうか、阿部さんに今度、確認してみよう。
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↑さっそく自宅で作ってみました。でも、「さっと湯がく」ところを、「かなりしっかりと湯がいて」しまい、食感はもっさりしてしまった。
by 2006awasaya | 2007-11-18 17:40 | 真剣!野良仕事

【真剣!野良仕事】[53=ロバとラバと山田青年]

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↑市原の「ゾウの国」にいた明るい色調のロバ(右上)と濃い褐色に白のパターン柄のラバ(下)、その陰にいるロバ(左隅)
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↑市原のロバとラバについての案内板

驢と騾

 還暦を1年踏み越したボクの目から見ると、「青年」は総じて不思議な存在なのです。不思議な存在なのですが、この山田青年は自分の過去に照合しても該当する痕跡がないのです。多少大袈裟な物言いになりますが、バックグラウンドも世界観も、蓄積してきた見聞の量も全く違う人がいて、しかも興味の方向性が同じような青年がいる。これって、ねじれていながら、最後のところでぴったりと辻褄が合っているようで、結構幸せなこと、じゃないですか。同年配の方々は、帰属する集団でのランキングをはずした途端に淋しがり屋さんだったり、恥ずかしがり屋さんだったりという素顔を見せることがあり、そんな一瞬を見るだけで余計に身近な存在になったりしますが、年齢差が世代差以上に開いている場合、なかなか共通する話題がないこともあり、話そのものが成り立たないのが現実。そんなことを考えに入れると、ボクの場合、山田青年と話ができることは、窺い知れないもう一つの世界を覗き見る楽しみにもつながり、それで毎週末に畑に行くのが楽しみになってきているのです。
 かれは船橋市に住んでいて、もともとは建築を目指していたんだそうです。

長谷川 建築?
山 田 アクアラインのそばの建築系の学校に通っていました。

 山田さんて、声を張り上げておしゃべりするタイプじゃないんです。鎮守の森のようにしーんと鎮まった奥の社(やしろ)に住む青年と言ったらいいのかしら。

 その山田さんからロバについて聞いて以来、ロバのことが妙に気になって、ネットで調べてみたら、意外なことにロバについての書籍も、情報もほとんどないことが分かった。で、山田さんとおしゃべりをした翌週、家族で南房総にドライブ旅行に行った帰り道、市原のゾウの国に立ち寄ったんです。孫がまだゾウを見たことがないって言うんで。そしたら、一番奥まったところにロバとラバがいて、なんだか嬉しくなっちゃって、写真パシャパシャ撮りながら、待ったんです。およそ聞くに耐えないと山田さんが言っていたロバの鳴き声を聞きたくて。でも、1時間待っても鳴いてくれない。なんてサービス精神のないヤツだろう。そういえば辞書を引くと「強情な」という形容に使われる家畜という説明があったけど、なるほどそのとおりだなあって思いながら、でも、鳴き声が聞きたくて、でも、京葉道も混んじゃうし、後ろ髪を引かれる思いで帰ってきたんですが、気になっていることって、向こうから近寄ってくるんだなあって、別な意味で感動したんです。ゾウを見に行ってロバに会えるなんて。

山 田 ロバって、なかなか鳴かないんです。それに、情報が少ないんです。『驢と騾』という本が唯一の研究書なんじゃないかなあ。
長谷川 え! その書名、ネットに紹介されていましたが、なんだかピンぼけ写真が1枚掲載されているだけで、なんだかよく分からなかった。
山 田 実は神保町で1日がかりでその本を見つけたんです。
長谷川 え!
山 田 今度持ってきますよ。お貸しします。

 そんなこんなのおしゃべりからさらに1週間後、その『驢と騾』が送られてきた。
Lorraine Travis著の『The Mule』といっしょに。

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          ↑『The Mule』

 実に久しぶりに辞書片手に『The Mule』をぱらぱら。馬やロバと暮らしていた著者トラビスが1976年にはじめてラバと出会い、ラバの賢さや能力に惚れ込んだ彼女自身の顛末記。欧州世界とはいっても、ラバもロバも知らない読者も多いのだろう、目次の前に言葉の定義が配されている。

 例えばこんな感じ。

Definitions(定義)
Mule=male donkey × female horse(ミュール=オスのロバ × メスのウマ)
Hinny=male horse × female donkey(ヒニィー=オスのウマ × メスのロバ)

 目次を引用すると、
1 What is a mule ?(ラバとはどんな動物?)
2 The mule in history(歴史の中のラバ)
3 Military use of the mule(ラバの軍役例)
4 Scientific aspects(ラバの進化相)
5 Mule ownership(ラバの飼い方)
6 The mule today-and tomorrow(ラバの現状と今後)

 以上のような内容です。

 入手の仕方からブリーディングの方法、ラバの進化とその歴史的な役割など、さすが家畜とともに暮らす生活を何世紀にも渡って続けてきたヨーロッパ世界向けの内容です。家畜との関わりが希薄な日本人にはここまで懇切丁寧な説明をされても消化不良になりそうで、第5章の「ラバの飼い方」をもっと克明に案内してくれた方が役立つのになあと、そんな気持になりました。そもそも日本には牛馬のブリーディングや去勢の技術が日常の暮らしからすっぽり抜け落ちていて、しかも歴史的に振り返ってみても、「血」を見るのは血判状に押すくらいで、家畜を犠牲として捧げたことがない精神世界を持つだけに、異種である馬と驢馬を掛け合わせて騾馬を創ろうなんて発想そのものがなかったんだから仕方がない。鋤や鍬や弓や刀など、道具への創意工夫、改良改革はあっても、牛馬は同じ働く仲間、けっして道具なんかじゃないという精神性が邪魔をして、江戸期まで改良改革の対象とは見つめなかった日本人が、明治に入ってやっと先進のヨーロッパにおける軍馬の必要性に気がつき、家畜を見直す外圧となり、『驢と騾』の研究が日の目を見たのではないだろうか。

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                    ↑『驢と騾』

 さて、その『驢と騾』。著者は陸軍技師で農学士の兼松滿造さん。昭和18年9月、東京・書肆「養賢堂」。
 内容を目次から見ると、以下のようになっています。
第1章 驢、騾の生物学的考察
第2章 驢の野生形態
第3章 驢と騾の分布
第4章 驢、騾の生産、改良
第5章 驢、騾の使役価値

 発行時期から見て、どこまでも「軍益に供する価値あり」とする陸軍への提案書のような内容で、『The Mule』の著者のようなフレンドリーな記述はどこを探しても出てこない。仕方のないこと。でも、滅多にお目にかかれない内容の本です。長くなりますが、内容について少し紹介させてください。
 面白いと思ったのは、驢馬と騾馬と馬の総数。
 萬國農事総計(International statistics of Agriculture,1937)によれば、として引用されていたデータは以下の通り。馬に比べ、驢馬も騾馬も結構な頭数がいたのが分かる。

馬  101,101,600頭
驢  34,129,000頭
騾  17,065,800頭

 この資料は国別の資料もつづけて掲載されていて、日本は154万頭の馬の頭数は出ているものの、驢馬と騾馬の頭数は把握できておらず、空欄のまま。
 ほう、結構な頭数がいたのだな、大半が農耕馬だったに違いないと思いつつ、いまでもこうした統計資料があるはずと、ネットで調べていたら、FAO(国連食料農業機関)の2006年度の世界統計に行き当たった。馬は世界で5,800万頭、日本は2万5000頭という数字だった。ちょうど70年が経過した時点で、地球規模で馬は半数、日本では1/70に激減していた。驢馬と騾馬は言うに及ばず。車の登録台数と比べたら、増減は見事な対比を見せるのだろうな。
by 2006awasaya | 2007-11-12 12:14 | 真剣!野良仕事

【真剣!野良仕事】[52=ありがとう! 飯山満南小学校3年生]

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↑広ーいブロッコリー畑で、みんなといっしょに虫取りだ!

ありがとう!飯山満南小学校3年生

 11月2日(金)の21時12分に飯島さんから回覧mail。
 内容は以下の通り。

[明日午前中、飯山満南小3年生がブロッコリーの虫取りにきます。対応よろしくお願いします]

 当日、小学生が何時にどこに見えるのか、分からなかったので、好人舍裏の竹林で焚き火をして暖をとっていたら飯島さんから携帯に電話あり。

飯 島 長谷川さん! いま、どちらにいらっしゃる?
長谷川 えーと、竹林で焚き火に当たってます。
飯 島 えー!ちょうど良かった!畑で写真、撮ってくれませんか。小学生とその親御さんがブロッコリーの虫取り、やってくれているんです。
長谷川 ハイ、了解しました。すぐに伺います。

 ブロッコリーの畑に行くと、およそ30名くらいの子どもさんと親御さんが、ブロッコリー畑の畝に沿って腰を屈めたり、膝をついたりして、虫取りの真っ最中。
 その様子を見ていると、お母様方は割り箸でこわごわと虫を摘んでいるが、子どもたちは「居たあー」「見っけ!」なんて、嬉々として甲高い声を上げながら、なんと素手で摘んでいる子もいる。
 引率の先生、高山先生と岡田先生に聞くと、ブロッコリーの苗を定植しにきたのが9月13日。その後、10月20-21日に草取りに来て、本日、11月3日に虫取りに来てくれたそうです。
「無農薬で野菜を栽培することの大変さを子どもたちに分かってもらいたくて、それで飯島農園の協力をいただき、畑にやってきているんです」と高山先生。
 片手にポリの袋、片手に割り箸。ポリの袋を見せてもらうと、おお、青虫がぞろぞろ。
 飯島さん、そんな子どもたちを眺めながら、
「こんなに集中して虫退治をしてくれると、この冬のブロッコリー、とってもおいしいブロッコリーになりますね」と、とっても上機嫌。おいしい野菜ができることが、何よりも嬉しいのだな。
 1時間ほどして、高山先生がよく通る声で、「はーい、みんな! どうもありがとう。お疲れさまでした。虫はいっぱいいましたか? 農薬を使わないて野菜を作るってことは、こんなに大変なことなんです。雑草を抜いたり、今日やったような虫取りをやらないと、おいしい野菜はできないんです。それではそんなおいしい野菜を作ってくれている飯島さんにありがとうを言って、終わりにしましょう」
 ふだんは静かな畑に、子どもたちの明るい声が響き渡ります。
 その後、虫取り作業をしながら、感じたこと、疑問に思ったことなどを飯島さんに質問し、子どもたちに分かるように答える飯島さん。

生徒A この虫、丸まって地面にいたんですが、なんて虫ですか? 青虫みたいな緑色はしてなかったし、葉っぱに着いてたんじゃないんですが。
飯 島 へー、よく見つけましたね。その虫はヨトウムシって言って、昼間は土の中に隠れていて、夜になって動き出し、若葉が出てくる芯のところをムシャムシャとたべる夜盗蛾という蛾の幼虫なんです。見つけたら、その場で踏みつけたりして駆除してください。去年はそのヨトウムシの被害でブロッコリーが全滅したんです。どうもありがとう。
生徒B 虫取りをやっていたら、同じ株の葉っぱで色の違う葉っぱがあったんですが、それはなぜですか?
飯 島 ええと、葉っぱにもみんなと同じように個性というか、違いがあって、みんなもひとりひとり違う顔だったり、肌の色も違うよね。それとおんなじ。それでいいかな。

 そんな子供電話相談室みたいな質疑応答があり、ブロッコリー虫取り作業は終了しました。どうもありがとうございました。40名前後が一斉に虫取りをするって、人海戦術のすごさを改めて感じました。飯山満南小学校3年の皆さん、父兄の皆さん、どうもありがとうございました。

 その虫取り作業をスナップ写真で紹介していきましょう。


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by 2006awasaya | 2007-11-04 21:15 | 真剣!野良仕事

【真剣!野良仕事】[51=三宅島三本岳の釣果に『ああ至福、ああ極楽』]

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↑アンデルセン公園南ゲート脇にある船橋市農業センターの南瓜展示棟。全国の南瓜が展示してあり、先週収穫してきた加賀伝統野菜の一つ、打木赤皮甘栗かぼちゃもあった。
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↑その展示棟に展示されていた「備前縮緬黒皮」に「びぜんしゅくめんくろかわ」と読みがなを振っていましたが、これは「縮緬=ちりめん」と読ませないと意味も伝わりません。担当の方、厳重注意ですね。

三宅島三本岳の釣果に『ああ至福、ああ極楽』

 10月20日(土)に打木赤皮甘栗かぼちゃの収穫と畑の整理を終え、自分の区画の畝を作り直し、お正月用の小松菜とほうれん草と蕪の種を筋播きし、ロバとの共生に夢中の山田青年についての話など、久しぶりに飯島さんとおしゃべりをした翌週の土曜日10月27日。すこし風邪気味だったこともあり、生憎の雨でもあるし、畑に出るのをキャンセルして家で読書。アジア人の人生訓でもある「晴耕雨読」を地でいく1日になりましたが、この日の昼前、鷹島さんから回覧メール。

[本日27日(土)は、雨のため作業は中止とすることになりました。今、好人舎にはハーブの方たちの講座が開かれています。明日は、天気回復の見込みのため、午前、船橋市農業センター見学、午後、畑での作業の予定です]

 そして、10月28日(日)の朝、少し早めに好人舍に着くと、飯島さんが回転式の農具研磨機で出刃包丁を研いでいるじゃないですか。

長谷川  おはようございます。ところで、どうしたんです、こんな朝早くから包丁なんか研いだりして。
飯 島  今週前半に、三宅島復興支援も兼ねた農業関係の全国大会が三宅島でありましてね。それに出席のため出張していたんですが、帰りがけ、東京に戻る船の時間が少しありましたので、三宅島から約10キロばかりはなれた岩礁、長谷川さん知ってっかなあ、三本岳って。釣りをやる人だったら知らぬもののない超有名な岩礁なんだけど、そこに行ってきたんです。なんせ久しぶりだったこともあり、いやあ、楽しかったなあ。アオダイ、カンパチなど大型が何本も。釣果もすごかった。持参した大型のクーラーボックスに入りきらないほどで、帰ってすぐに三枚に卸して、ちょうど今日あたりがうまいんだ。これをみなさんに御馳走しようと、ね。
長谷川  会議にクーラーボックスを持参するっていうのも、確信犯っぽくて羨ましいくらいに素敵な心構えだなあ。それと、ボクも包丁仕事、嫌いじゃないんで、みんなが集まってくるまでの間、なにか手伝わせてください。

 そんなおしゃべりをしながら、飯島さんの指示で三枚に卸した半身をヅケにして、残りを大皿に。釣り上げたばかりの刺身は身が締まって、ボクなんかには硬くて噛み切れなかったりするんですが、3〜4日、冷蔵庫で寝かしておくと軟らかくなって旨味も増してくる。ボクはそう思っていたんですが、飯島さんも全く同じことを言ってくれるので、嬉しくなっちゃう。一切れ二切れ、お醤油に漬けて食べてみる。う〜ん、甘い、旨い。

飯 島  釣り上げたばかりの魚が旨いっていいますが、僕なんかはしばらく放っぽらかした方が旨いと思うんです。で、今日が食べごろ。青唐辛子を刻んだ醤油に漬けて、昼頃にはいいヅケになるだろうな。
長谷川  それにしても旨いですね、これ。カンパチですか? アオダイって食べたことないなあ。おお、これも旨いなあ。
飯 島  天然物って、こうして刺身にしていても、包丁が脂でギトギトしないし。ね、旨いでしょ、アオダイって。
長谷川  朝からビールが飲みたくなっちゃうなあ。

 そんな下準備をしていると、仲間がちらほら集まってきて、朝の挨拶を交わしている。
 9時30分。鷹島さんの回覧メールにあった船橋市農業センターの見学へ。すぐ近くのアンデルセン公園の南ゲート横にある施設なので、アンデルセン公園の北ゲートから入り、名物のアイスクリームをナメながら園内を突っ切り、南ゲート脇の船橋市農業センターへ。
 ここは農事試験場と言った性格も併せ持った船橋の農事関連施設で、園芸や家庭菜園のイベント会場として使われているらしいが、一般の人にはほとんど無縁の施設。センター内には大型のハウスが5棟ほど建っていて、パプリカやメロンなどが栽培されていた。そのうちの一棟で、時節柄のハロウイーンにちなんだ全国南瓜展示会をしていて、先週収穫を済ませた打木赤皮甘栗かぼちゃも展示されていた。さすが、プロが作ると、一回り大きく、しかもオレンジ色も濃く、いかにも美味しそう。
 見学を終え、ふたたびアンデルセン公園南ゲートから再入園し、妖精たちの森を抜け、子ども美術館の脇にある出入り口から園外へ。久しぶりに来たアンデルセン公園だから、もっと園内のいろいろを見て回りたいけど、気持ちはアオダイとカンパチのヅケが待つ飯島農園へと帰心矢のごとし。
 帰り急いだには訳があったんです。ごめんなさいね、みなさん。でも、みんな美味しい顔でしたね。四角いテーブルを囲んでアオダイとカンパチに舌鼓を打ったのは飯島、坂本、松本、井上、海野、大内、山田青年、長谷川でした。
 回覧発信人の鷹島さんは、贅沢なこの昼食を目の前にしつつ、都合で「お先に失礼します」と言いおいてご夫婦ともども早退。ああ、アオダイの、カンパチのひとひらなりとも賞味して行っていただきたかった。それはさておき、小春日和にも似た柔らかな日差しの中で、三宅島三本岳の釣果を賞味した優雅なひとときでした。ああ、至福、ああ極楽。
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↑見事な包丁さばきを見せる飯島さん。
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↑アオダイのお刺身。
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↑カンパチのヅケ。
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↑「まあ、おいしいこと!」と、それに続く言葉を失ったご一同さま。左下・坂本さんから時計回りに、井上さん、海野さん、大内さん、山田さん。その美味しい笑顔を見ながら、最後の一切れをいただく長谷川でした。肝心の飯島さんは、お刺身が足らなくなったので、キッチンに行っています。この間、一同、「今後、飯島さんが出席する農業関係の研修会や会議は島でやってもらおう」「おお、いいね、いいね。渓流沿いも期待したいところですね」「その会議出席の折りには周囲に気兼ねすることなく、クーラーボックスを担いで行くようにって、だめ押しもしておきましょう」と、異様な注文をつける畑の面々でした。  
by 2006awasaya | 2007-11-04 17:14 | 真剣!野良仕事

稲の観察記録[第26回]

2007.11.4
稲の観察記録[第26回]
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安藤 しめ飾りというものはワラ縄のほかにどんな材料を使って、どんな風にできているのか。近所のホームセンターにA子と出かけて調べてきた。それを元に材料を集める。A子が以前に拾ってきていたマツボックリ、私の家の庭のマンリョウ、台所の棚にあったキリタップ昆布、近くの公園の松の枝などである。紙垂(しで・しめ縄についているヒラヒラした紙)を作り、「笑門来福」の文字はA子が得意のお習字で書いた。札は菓子箱の厚紙である。落款は私が消しゴムを彫って作った。全部手作りのしめ縄完成である。豪華にできあがった。

飯島 しめ縄に藁を使われることに、私は勝手な推測をするのですが、お米が毎年穫れて、大切な役割を果たしていることときっと関係しているな、と。
by 2006awasaya | 2007-11-04 11:24 | 稲の観察記録