<   2012年 01月 ( 1 )   > この月の画像一覧

【真剣!野良仕事】[176=情操多層味噌開封す]

2012.1.24(火)

 昨年平成23年2月19日はずいぶんと寒い日でした。この寒さ厳しい中で仕込んだ情操多層味噌を、本日1月24日(火)午前中に開封しました。

 今日も厳しい寒さでした。前夜から雪が舞い始め、朝方、犬の散歩に出ようとカーテンを開けて外を伺うと、うっすらと積もっています。一面の銀世界です。ただそれだけで嬉しくなって、ソファーで寝ている小夏を強引に起こし、リードをつけて外に。
 ところが、道路はぱりぱりに凍っていて、小夏はスケートをしているようでうまく歩けません。スケートでも教えておけばよかったと、こわごわ付いてくる小夏に話しかけても、返事はなく、家に帰りたそうな顔で見つめるばかり。それでも、いつもと同じコースを約30分、ゆっくり歩いて家に戻りました。凍えるてをこすりながら、1年前の味噌仕込みの日も同じように寒い日だったことを思い出しました。その樽詰め作業については、ほぼ1年前のブログ(「142=情操多層味噌」)にくどく説明しましたのでご参照ください。

 さて、2階の納戸に置いてある味噌樽を開けてみようか。

f0099060_1550138.jpg

↑2階の納戸に置きっぱなしだった味噌。飯島農園から「今年も味噌作りが始まりました。参加しますか」との連絡を受け、ほぼ1年前に仕込んだ樽のうちの一つを開封することにしました。麹作り担当の金谷青年が、その製麹過程でバッハ、モーツアルト、ベートーベン、ブラームス、チャイコフスキー、ヨハン・シュトラウスと聞かせながら育てた麹の熟成ぶりやいかに。新聞折り込みに「初めての外国語ですから、ネイティブに」という語学教室入学勧誘のキャッチコピー、いいところ撞いてるなあと感心しますが、このコピーに惹かれるママも大勢いらっしゃるだろうな。きっと麹たちは生まれて初めて耳にする音が自然音ではなく、音楽だったら、きっと大きな影響を受けて育つのだろう、しかも西洋音楽だったらと、この1年、わくわくしながら開封のときを待っていたのです。
f0099060_1551588.jpg

↑ポリのフィルムをはぎ、米袋を脱がすようにずり下げると、樽のフタが見えてきました。あれ! フタの上面が少し汚れています。清潔に、清潔にと、清潔をモットーにすべての作業を進めたつもりでしたが、手袋に付いた原料がフタについたのでしょうか。胸がドキドキするほど不安です。フタがこんなに汚れているということは、あるいは樽詰め作業の過程でも、汚れに対しての注意力が散漫だったか。いまの時点で不安にとらわれてオタオタしているのなら、なぜに作業中に厳重管理をしなかったのかと、自分を責め、ま、この時点で反省しても取り返しがつくわけでもないことに改めて気付き、仕方がないかと汚れをぬぐいながらフタを取り除く。
f0099060_1550414.jpg

↑開けてびっくり。やはり、汚れていた! 味噌の色味はいい感じだが、樽の縁に雑菌が繁殖していた。樽の縁は特に慎重に丁寧にアルコールで消毒したはずなのに。この分だと、味噌のなかまで雑菌が繁殖しているんじゃないか。さて、1年前、ボクはどんな作業服で樽詰めをしていたんだろうか。確か、頭には外科手術などの際にかぶるヘアキャップをつけ、ヒジまでの長いゴム手袋をはめ、もちろん大きめのマスクをして樽詰めをしていたはずだが、その手袋についた味噌原料が、樽の縁についたままだったとは! アルコールを含ませた不織布、キッチンペーパーですが、その不織布で丁寧に消毒したあとで、汚れた手袋で触ってしまったに違いない。
f0099060_15525378.jpg

↑大きめのスプーンで樽の縁に発生した雑菌を散らさぬように少しずつ、丁寧に取り除く。息を止め、慎重に慎重に。取り除き始めると、この雑菌は意外と味噌樽のなかに根を張っておらず、きれいに取り除けた。無意識に1年前の作業工程を振り返っていた。まず、樽をきれいに洗い、熱湯をかけ、アルコールで消毒し、樽の底から少しずつ味噌の原料を詰め始めた、はずだった。そうだ、ここまでは慎重に丁寧に作業したんだ。少しばかりほっとする。さらに一昨年の味噌樽を開封した折のことを思い出す。あの時も不安な気持ちを抑えて開封したんだった。お、意外ときれいに仕上がったというのが第一の印象だった。そのときの印象が、縁についた雑菌を取り除いたこの場面でも甦ってきた。
f0099060_15532522.jpg

↑樽詰め作業は清潔に、慎重に、丁寧に進めなくてはいけないもの。この作業をいい加減に進めると、1年後、とんでもない姿になる。この樽には10kgを詰めた。その一番上まで詰め終え、円板状のコテで表面を鏡面仕上げにし、円形にカットしたキッチンペーパーにアルコールを浸し、空気が入らないように密着させ、その上にラップを被せて密着させたが、そのラップを剥いだ状態がこの写真。いい色だ。成熟の色だ。西洋音楽を聞いて育った麹の成熟ぶりが、この色になっているのかな。ラップを取り除いたこの段階になると、かぐわしい味噌の香りが立ち上がってくる。「うん、いいんじゃない」なんて若者風のフラットな語調でつぶやき、少しばかりはしゃいでみる。
f0099060_15534570.jpg

↑キッチンペーパーの端っこを摘んで持ち上げる。「う〜ん、いいんじゃない」。この色、この香り。人間だと受胎から出産までの十月十日、羊水に浸かりながら水中生活を送り、出産と同時に肺呼吸という一大転換を強いられるわけだけど、このキッチンペーパーを剥いで空気に曝すことが果たして人間の出産シーンのどこに相当するのか。ボクとしてはなんだか肺呼吸を強要された場面と似ているような気がして仕方がない。う〜ん、いい匂いだ。キッチンペーパーを摘んだ指先を嘗めてみる。「う〜ん。まるい、のかな。まろやかって感じかな」と、できるだけ適切な言葉を捜して慌てている。この天国的なまろやかさはモーツアルト由来かな。ええと、モーツアルトのなんだったっけな。そうか、シンフォニーの40番、41番だったか。
f0099060_1554538.jpg

↑さて、昨年平成23年度の味噌作りのテーマは二つ。音楽を聞かせながら麹を育てる「情操味噌」が一つ。さらにもう一つが、ミンチ状に大豆を砕いて詰めにする層と破砕せずに粒状のママの層を交互に樽詰める「多層味噌」。さてさて、断面が判るように掘削してみる。おお、表面から5センチほど下に粒が見える。この1年、粒は溶けずにいたんだ。表面からミンチ層、粒層、ミンチ層、粒層、ミンチ層の順で樽詰めした通り、断面が露出している。どこか、遺跡発掘現場を覗き込んでいる風がある。破砕遺棄された土器片が出てくるんじゃないか。妙に興奮する。粒を摘んで味見してみる。ん? 溶けるほど軟らかいと思って口に含む。思っていたより硬いな。1年を経過して身を硬くしたのかな。
f0099060_1554343.jpg

↑ミンチ状の味噌です。仕上がり具合は仕込み続けてきた昨年来の味噌とほとんど変わりませんが、情操教育を受けた分、気持ち表情が柔和になったような。これっていわゆる親の欲目ってものでしょうか。
f0099060_15545047.jpg

↑粒状の味噌です。仕込む際、粒々がもっともっと大豆姿のままに残り、一種の豆味噌のようになるのだろうと想定したのです。そう、糸を引かない納豆状態を想定していました。でも、想定外なことに、ミンチ状の味噌の中に大豆の粒を隠したような仕上がりでした。


「繊細」という滋味が加わった味噌でした

 麹づくり担当の金谷青年によると、「今年は去年の曲目に加え、ラヴェル、メンデルスゾーン、デュカス、ラフマニノフ、ガーシュィンなど、新曲を増やしました」と連絡がありました。
 どうやら畑のお仲間の大村さんが昨年の味噌づくり終了後に、「フレデリック・ショパンのピアノコンチェルトとか、幻想即興曲あたりをかけると、繊細な、今にも壊れてしまいそうなお味噌ができるかも」という印象を漏らしたことを承けての軌道修正、あるいは軌道強化かとも思われます。バッハ、ベートーベン、ショパンなどの古典だけではなく、ラフマニノフやガーシュィンなど近代の情景を情操教育リストに加えたのは、壊れてしまいそうな「繊細」への補強強化だったのかもしれません。
 くどいようですが、開封した平成23年度産のお味噌は、いままでの風味に加え、「繊細」という滋味を加えていたことを、ご報告いたします。
 荒ぶる剛腕を時代が求めても、われら稲人は、しなやかなる「繊細」を持つことが依然として要求されているのかもしれません。今年もまた繊細をもとめての味噌づくり、よろしくお願いいたします。
by 2006awasaya | 2012-01-25 16:00 | 真剣!野良仕事