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【真剣!野良仕事】[231=ネギの草取り]

2015.8.5(水)

猛暑下の草取り、完了

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↑2015.8.2(日)10:20のネギ畑。全体15畝中、12畝が草取り未完了。この姿を見て、声を飲む、息を飲む。声か息か、どちらを飲むのがこの場面を目の前にしてふさわしいのか、判然としないが、どうしたらいいのか、息をするのも忘れるくらい呆然とする。
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↑2015.8.4(火)10:20のネギ畑。7:00から作業を始めて、全体15畝中、13畝まで草取り完了。残り2畝。これならあと2時間あれば草取りが完了しそうだ。でも、ここで頑張ると、熱中症になること間違いなし。思いを残して明日の作業とする。
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↑2015.8.5(水)8:40のネギ畑。7:00から作業を始めて、全体15畝全ての草取りと除草した草の撤去完了。なにやら名状しがたい風景を眼前にして、ただ声もなくこの美しいネギ畑に見とれる数分の至福。


7月31日(金)
  21:41に飯島さんからmail。
 一体全体どうしたんだろう。
 前日に収穫したスイカに問題があったのかしら。
 
 恐る恐るmailを開くと、以下のような悲鳴。

「夜分、押し迫りゴメン 明日盛岡に出張の折り、足を伸ばし、飯島農園スイカスタッフ面々が作ったスイカ20数個を三陸へ届けます。なお、農薬を使わないネギが雑草に食われそうです。そこで雑草退治参加者募集。明日8時より退治するまで」

 前日7月30日の木曜日にメンバーと一緒にスイカを収穫し、今年も三陸へ暑中見舞いとしてスイカを届けることができましたと、現物を託し、その様子だけは【真剣!野良仕事】[230=今年もスイカ、お届けできますよ]で報告しましたので、21:41のmailはてっきりその現地報告かと思いましたら、内容はそんな暢気なものではなく、悲痛な内容でした。秋になり、再び三陸を訪問する折りの手土産代わりに栽培しているネギなんですが、なんとそのネギが雑草に覆われて大変なことになっているというのです。

 飯島農園の野菜類は農薬を使わない栽培なので、年がら年中、雑草取りに励まなくてはなりません。でも、今夏は例年以上に気温が高く、オクラが予測よりも早く成長し、収穫が間に合わなくなっていたのです。オクラはたった一晩で規格寸法の10センチから15~20センチ近くに巨大化し、しかも硬くなるので、市場に出せず、廃棄となってしまうのです。ですから、規格寸法のオクラだけを早朝に収穫しなくてはいけないのです。オクラは、オクラの葉も茎も実も全くの同色なので、見過ごすことが多く、気がつかないままのオクラは翌朝になるとすでに巨大な成長を遂げているのです。ゆえに、丹念に収穫作業を進めなくてはいけないのです。

 こうした事情があって、オクラ畑に人手が集中し、それでネギが放ったらかしになってしまっていたのでした。

 7月下旬から寝苦しい夜を悶々と過ごしていたのは人だけではなかったのです。無農薬栽培のネギもまた、雑草たちに絡みつかれて、悲鳴をあげていたんです。

8月1日(土)
 ネギ畑に行ってみると、全体15畝あるうち、4畝は草取りが済んでいました。盛岡出張を前に、飯島さんが深夜早朝、独りで草取りに励んだのでしょう。でも、限られた時間でこれだけの数の畝を除草するのは、到底無理なこと。あの悲痛なレスキューmailは、こんな絶望的な状況を経て送信されたに違いありません。ボクは残りの畝を見て、「なんでこんなになる前に知らせてくれなかったのか」という気持ちでした。残り11畝は雑草に覆われ、惨憺たる畑になっていました。

 草取り作業はいったい、どんな作業なのか。少し具体的に説明しましょう。

 ネギが植わっているV字の底を跨ぐように、ネギの根元に取り付いている雑草を丹念に引き抜き、山脈状の畝の上に乗せて、ひざまずいた足がネギをふんずけていないかを確認し、半歩前進、この繰り返しで移動します。軍隊でいうところの「匍匐前進」にも似た行軍。喩えはどうあれ、炎天下、地面に這いつくばっての作業です。草刈機などの機械や鎌などの道具は使えないのです。ただただネギの根元に絡みついた雑草を手で引き抜く、この繰り返しなのです。そして、機械仕事のように同じ作業を繰り返している訳にはいかないのは、引き抜いた雑草と一緒にネギも引き抜いてしまうことがあるのです。等間隔で植えられているネギのすぐ脇に生えている雑草だからといって、その雑草を引き抜くと、その雑草から枝分かれした茎が身をよじって手前のネギに絡みついている。こうした雑草の茎がネギ1本に対して3本絡んでいると、これはこんがらかった綾取りの糸と同じで、解すにはそれなりの時間がかかり、苛立って力任せに引き抜こうものなら、ネギも一緒にごそっと引き抜くことになってしまいます。草取りをしているのか、ネギ抜きをしているのか、訳のわからないことになってしまいます。

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↑悪意さえ感じさせる雑草たちの生存への戦略。ネギを取り囲むようにヒゲ状のナイロンテグスに似た強靭な根を張り巡らせ、容易に引き抜かれないようにしている。これこそが雑草の戦略なのだと感心する。ネギがどこにあるのか、ちょっと見では判然としないでしょうから、一応⇨をつけてマークしておきましたが、オールグリーンの中で浅葱色をした細いチューブが見えるかと思います。それがネギです。雑草たちに絡まれて、怯えたようでもあり、鬱陶しくもあり、息苦しそうで見ていられません。


 背中は炎天にあぶられ、ズボンは泥だらけ。汗が目に入り、開けていられないほど痛む。高校球児たちの泥にまみれたユニホームは、結構清々しく頼もしく見えますが、ネギの草取り姿は果たして何に似ているのかしら。

 この日、僕は昼から長男の住む我孫子で花火大会があり、花火が始まる前にビールを飲んで、夢うつつで花火を鑑賞。そんな計画を立てていましたので、草取りは11:00までしか手伝えません。
 しかも、作業を開始した朝8時の時点で、すでにして猛々しいばかりの真夏日となっていました。持って行った3本のペットボトルと大粒の梅干3個はあっという間に消費。肝心の草取りは1畝だけしかできませんでした。下着まで汗びっしょり、ズボンは泥だらけ。途方に暮れて時計を見たら9:55でした。家に帰り、シャワーを浴び、体重計に乗ったら、なんと2キロ減!あれだけ汗だくになったのだから、これくらいは想定内ですが、嬉しいですね。
 
8月2日(日)
 8:00にネギ畑に行ってみると、天気の具合も作業の進捗も前日のまま。前夜、ビールを飲みすぎたので、頭の中はドローンとしたまま。「ま、やるほかないか」と一声かけ、「この列だけは終わらすぞ、終わらないうちは帰さねえぞ!」なんて自分にだけ聞こえる程度の絞った声で自らに聞かせて草取りを開始。誰かがいれば、こんな横柄で独善的なセリフ、口にできません。
 それはそうと、ボクは途方に暮れやすい性格なので、そうならないよう気構えだけはしっかりしておくんです。今日はペットボトル5本を持参、うち3本を凍らせてきましたので、暑さで気分でも悪くなったら、両脇に一本ずつこれを挟み、道を挟んだ向かいの茂みに駆け込めばいいやと。2畝をきれいに除草するのに2時間、かかってしまいましたが、前日よりも作業効率も良く、残りの畝の写真を撮ってから引き上げました。

8月4日(火)
 7:00にネギ畑に行ってみると、飯島さんが独り、草取りをしています。嬉しいですね、黙々と作業するにしても、独りと二人では気持ちの張りが違います。
 この日、3時間の草取りで、残り畝数は2列です。その大半は飯島さんの仕事でした。さすが飯島さん、プロですね。しかも、水分補給時、おしゃべりもできる。野良でのおしゃべりがたまりません。

長谷川 先月に行かれたスペイン視察の話、聞かせてくれませんか。天気は良かったのですか。研修だけで観光はなかったんですか。

 矢継ぎ早に浅い呼吸で質問。飯島さんも息を切らせています。喉を鳴らしながら水を飲み、汗をぬぐって一呼吸置いてからじゃないと言葉が出てきません。こちらの質問が果たして耳に入ったんだろうか、不安になる程の間があります。

飯 島 ええと、なんでしたか、天気でしたか。暑かったですよ。眩暈がするほど。旅行は主に自然エネルギーの視察に行ったんですが、自然エネルギーの宝庫って国でした。観光はアルハンブラ宮殿とサグラダファミリヤ教会が良かったな。通訳の方、80前後の女性で、この方が素敵でした。

 二人ともにちょっと熱気で頭の中が茹っていて、クールダウンの時間を取らないと、該当する記憶のポイントにたどり着けない。

長谷川 ところで、明日1日で残りの畝は完了しますね。
飯 島 本当にご苦労様でした。今日のところはこれで引き上げましょうか。
長谷川 これでもう何人か加わると、もっと早く終われたでしょうね。人集め、なにか、算段しましょうね。
飯 島 もう30年も前のことを思い出したんです。矢切のネギって知ってます? 松戸の近くに矢切ってあるでしょ、あそこ、昔は有名なネギの産地で、今でいう「矢切のネギ」というブランドネギの産地だったんです。
長谷川 「矢切の渡し」しか知りませんでした。
飯 島 当時、農林省のモデル農家研修という名目で、ネギの農家を見学させてもらったんです。もともと、ネギ農家って、そうたいした面積をやるわけじゃなく、それに、ネギは栽培に長い時間がかかるので、金になるまで時間がかかりすぎて、あまりいい商売じゃなかった。で、そこの農家では2町くらい作ってたのかな。当時としてはモデル農家だったんです。で、よく話を聞いてみると、年間に農薬の支払いが50万円も使っているって。いっぺんに嫌になっちゃった。
長谷川 ちょっと待ってくださいよ。30年前の50万ですよね。
飯 島 相当な使用量です。金額も大変ですが、その使用量を想像するだけで気持ちが悪くなってきて。当時は農薬会社が、「これからの農業は適正な農薬を適正に使って、きれいな作物を作って市場に出す。これがこれからの農家の主流だ」とかなんとか言って、農家にたくさん農薬を買わせたんですわ。インドの化学工場、実際には肥料工場ですが、そこで事故があって、数千人が一晩で亡くなったことがあって、これもショックでしたが、あの矢切のネギもショックでした。それ以来、うちでは農薬を使わないって決めたんです。
長谷川 その矢切の人、自分の体に変調が来てないといいですね。結局は農薬を使うその人が一番危ないのにね。
飯 島 どこの農家も、昔は危険と背中合わせで仕事をしてましたね。

 こんな貴重な話が聞けるのも、野良で一服入れているからこそ。まったくありがたい。
 残り2畝を写真にとって、汗水漬く状態で引き上げてきました。

8月5日(水)
 7:00にネギ畑に行ってみると、飯島さんはすでに草取りをしていました。1畝はきれいに除草されていて、残り1畝の半分くらいまで終わっています。相当早めに作業を開始されたんでしょうね。
 さて、体が悲鳴をあげる前に草取りを終わらせましょうと、作業目標が見えていて、しかもあと1時間以内に終わりが来る、そんな希望が持てる気持ちで作業を始めますから、きっちり1時間弱で草取りは完了。山脈上に積まれた雑草を集め、畑の外に移動して、これで草取りは完了したのです。
 ところで、草取り中、取り除いた雑草をひとまとめに丸め、一定間隔で山脈に積み上げておくと、日差しを受けて水分が抜け、1日おくと体積も重量も半分以下になっています。こうしたシステマチックな仕事ぶりが、つくずくプロの仕事だと感動しました。後々の作業を考えれば、こうした工夫をするのがプロで、ボクらシロウトは、まだ生な重い雑草の山を運ぶだけでいっそう消耗してしまうんです。1日、収集した草を山脈に寝かしておくと、作業は楽になる。ああ、プロフェッショナル!

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↑畝と畝の間の谷間にネギ、山脈の上に集めた雑草を等間隔で置いておく。すると、1日で体積と重量が半分になる。体力の消耗も半分に。

 一息入れていたら、なんとも嬉しい声が!

「おお、いい感じになったもんだ。やればできるじゃん!」

 飯島さんの後輩の細谷さんでした。

 いいものですね、「やればできるじゃん」なんて、ふつうの人間関係ではなかなか言えたもんではありません。
 辛辣なことをズバリと言い合える仲間がいる。
 実に羨ましい限りです。
「やればできるってことは、やらずにほっておいたのは誰だってことだよ」と、解説付きの細谷さんに、「まったくその通りだからシャンねえなあ」と飯島さん。

 ここ数日、いい経験をさせてもらいました。
 いい話を聞かせてもらえました。
 無農薬で栽培期間の長いネギを作る。
 年がら年中、草取りがメインの農業。
 来年は栽培面積をいまの倍にする予定ですから、参加したい方、無農薬のネギを食べてみたいという方、今年の秋口までに下記アドレスにぜひご連絡ください。

box1001hasegawa@ybb.ne.jp

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↑一息入れて、ガブガブ水を飲んで、休憩中の飯島さん。サウナから出た直後の、茹だるような顔色でした。ズボンに着目してください。色味の強いチノパンを履いてるんじゃないんです。元はブルーの作業着。裾のあたりを見ると了解していただけると思いますが、あの部分は地下足袋のこはぜで留められていたので、土が付いてなかっただけ。
by 2006awasaya | 2015-08-05 18:46 | 真剣!野良仕事