【真剣!野良仕事】[142=情操多層の味噌]

2011.2.19(土)
情操多層味噌って?

 ことしも味噌づくりがはじまりました。各メンバーに味噌づくり参加のmailが配信されました。

【おいしい野菜公園の皆様】
 飯島農園の鷹島です。
 今年も本日から味噌作り作業が始まりました。
 味噌作り参加者を下記の要領で募集いたしますので
 ご参加のほどよろしくお願いいたします。
[日時]  2月19日(土)or 20(日)10時〜
[料金]  470円/kg

 通知を受けて、参加したい旨を連絡。その折、下記のようなお願いを添えて見ました。

「大豆はつぶさず、豆のママの層を樽の下の方に2層ほど、断層のようにして詰めてみたいのですが、そんな勝手は許されますでしょうか」

 すると、製麹責任者の金谷さんからOKのmail。
 これだけでなんだかとても今年の味噌づくりが楽しみになってきました。
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↑2月19日、味噌づくりに参加し、多層味噌をつくってきました。これはミンチ状の上に豆状の層を作り、その上にミンチ状の材料をお団子にしてこれから層にするところ。
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↑もう少しで豆状の層が隠れる。
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↑陽当たりで撮ったので、こんな色調ですが同じ味噌です。ミンチ状の層に再び豆状の材料を入れました。
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↑再びミンチ状の材料で敷き詰めた状態。
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↑最後は表面を丁寧にならし、アルコール消毒をした不織布、ま、分かり易くいうとキッチンペーパーですが、それを円形に切り抜いて味噌表面を覆い、その上をさらにラップで覆い、カビが発生しないようにする。
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↑言葉で説明するとうまく表現できないので、断面図をイラストにしました。今年の多層味噌樽はこんな感じです。

 さらに、今年は麹づくりの段階で、「金谷さんが新工夫してるみたいよ」という噂を耳にして、はてさて、いかなる試みがあるのやら、期待ワクワク。金谷さんはもう5年目の製麹です。日本酒にしても醤油味噌にしても、原点は麹づくりにあるわけで、金谷さんなくして我らが味噌づくりは成り立たないのです。そのキーマンが新工夫しているというのです。ワクワクしないわけには行きませんよね。とくに平成22年の味噌は発酵の進み具合がほどよくて、味もイロ味もボクにとっては最上級の味噌でした。平成21年産が今までの中で最もお気に入りの味噌でしたが、それを上回わる風味の佳さなのです。
 このブログ、【真剣!野良仕事】の[118=蝦茶か駱駝か]に、その平成21年産の味噌と、平成19年産味噌を比較して味比べ、色比べをしていますので、併せてチェックしていただいてもいいのですが、今年は全国的にも厳冬、味噌づくりの環境はベスト。ただし、麹づくりご本人の金谷さんが風邪など召されてはいけないので、その点だけは厳重管理を祈るだけです。
 さて、そんなこんなの風評を確認するでもなく、畑の整理をしていましたら、おもしろいことや変わったこと、とんでもないことが人一倍大好きな大村さんから、
「今年はとんでもなく上品なお味噌ができるかもよ」と破顔しているのです。

 その夜から、味噌づくりに参加する旨のmailが流れはじめ、「桶持参で10kgでお願いします」とか「5kgで2月19日、参加します」などの書き込みの中に、大村さんの発信mailを発見。それでその新工夫が分かった次第。
 そのmailがこれ。
「クラシック音楽は私も大好きで、車の中でもオペラをはじめ、いろいろとかけてます。フレデリック・ショパンのピアノコンチェルトとか、幻想即興曲あたりをかけると、繊細な、今にも壊れてしまいそうなお味噌ができるかも。ともあれ、出来上がりが楽しみではあります」

 そうなんです。麹づくりの過程で、音楽を聴かせていたんです。
 これはひょっとして、米麹を情操教育してるってことかしら。荒ぶる神に命じられるままに開化を拒み、原初の性質を剥き出しにしたがる温帯モンスーンの麹たちを、文明に馴化させようという試みでもあるのでしょうか。そのあたりは、ご本人にじっくり話を聞いてみたいと思いますが、高度な教育を受けた米麹の味には、訳もなく期待できそうです。

 トマトづくりの最中にモーツァルトを聞かせ、天国的に甘いトマトを作った農家とか、酒米の苗づくりの段階でワグナーを聴かせ、ギリシャ神話の酒神ディオニソスも酩酊するような酒米を作っている農家とか、とにかく農家の方って、常識にはとらわれない自由の翼を隠し持っている方々が多く、ボクも、音楽と植物の生育との関係を夢見ごこちで見守っているのですが、そんな夢想人の一人が金谷さんなんですね。

 なんだか、おもしろくなってきたでしょ。

 おまけに、畑でシマさんとおしゃべりしていて、「むかしのお味噌は豆を今のようにミンチ状にしておらず、煮豆のママ、米麹と混ぜて樽につめていましたよ。なので、お味噌汁をいただくときも、ふっくらしたお豆がお椀の底にたまって、それはそれで美味しかったですね」というひと言をヒントに、ミンチ状にした層と豆状の層を断層のように詰めたというわけです。それ故に平成23年産の味噌を、音楽的な教養のシャワーを浴びた『情操』にして『多層』な味噌という意味で[情操多層味噌]と命名したのです。
 大村さんから、音楽を聴かせていると耳打ちされたとき、金谷さんの音楽的な趣味から言って、悪魔的なワグナーは聞かせないだろうな、日本の歌謡曲もかからないだろうな、世界各地の民族音楽も聞かせてもらえてないだろうな、ショパンは入ってるだろうけど、それはピアノ曲で、協奏曲などの大掛かりなオーケストラ曲は丁寧にカットされたんだろうな、或いはひょっとして、三味線を爪弾きながら切々と、しかも、か細く意思表示する新内って線はあるかも、さらに天空を旅する渡り鳥の声ってのもありかも。曲目をそんなふうに詮索憶測する楽しい時間を持てました。
 すると、好人舍の出入口脇に、選曲リストが掲示されていたではありませんか。
 大村さんて、冗談でその場をいい気持ちにさせてくれる話術の持ち主ですが、その実、鋭く尖った批評精神の鏃で、あんぐりと笑い転げる周囲の腹黒いお腹を腑分けして面白がる人格かもしれません。「今年はとんでもなく上品なお味噌ができるかもよ。繊細な、今にも壊れてしまいそうなお味噌ができるかも」という大村さんの予感をボクは支持します。
 ああ、いまから来年の樽開けが待ち遠しいなあ。
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↑米麹が聞き入っていた曲名の一覧です。軽快な曲想の選曲の中に、ベートーベンの7番が入っていようとは空想すらできませんでした。できればフルトベングラーの葬送行進曲で麹たちが背筋を伸ばし、摺り足で伊勢神宮内宮の玉砂利の参道を歩んでいる数瞬が感じ取れるとうれしいが、どなたが指揮棒を振ろうとも、7番を聞いた麹なら、粛々としたお味噌が味わえること間違いなしだ。
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↑新工夫をしてくれた金谷さんです。
by 2006awasaya | 2011-02-20 17:52 | 真剣!野良仕事


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