【真剣!野良仕事】[16=ベロメーターを信じよう]

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↑今回の農業研修に参加した「田舎の学校」の面々。写真向かって右端がボクです。この中でボクと左端の方だけが「田舎の学校」のメンバーではなく、「飯島農園味菜畑オーナー」のメンバーです。「田舎の学校」と「飯島農園味菜畑オーナー」は何が違うのか。実はボクにもよく分かりません。年会費は確かに違うのですが、そのほかにも違いはいろいろあるはずです。この違いについてはまた別な機会に報告しようと思います。でも、みなさん、ほんとうに元気です。

農場研修に参加

「地域資源を活用した有機農業の実際について、興味ありませんか」と、飯島さんに声を掛けられました。
「有機農法ですか」と、ちょっと素っ気ない返事をしましたら、
「循環型なんだけどなあ」と飯島さん。なんだかあとを引く物言い。

 飯島さんのその物言いの裏には、ちょっとは有機農法についての勉強をしたんでしょうけど、その手の話題はざくざくあり、多少食傷傾向になっているかもしれませんが、でもね、今回の有機農法は循環型なんだけどと、まるでミラクルボールのような隠し球といった雰囲気で「循環型」を投げてきたのでした。

 で、折角買いかぶってくれたことに対して見送り三振もなんだし、
「ほう、循環型で出来るんですかね」なんて、ちょっと訳知りのスイングをしてしまいました。
 なにが循環なのか、地域資源とは何を差すのか、全然分かっていないにもかかわらず、「出来るんですかね?」なんて、及び腰ながら咄嗟にバットを出している自分にも大いに驚いてしまいましたが。
「それじゃあ、10月14日の土曜日、好人舎前に10時集合。実際の研修会場は我孫子市です。詳細は好人舎前に張っておきますから」といって、飯島さんの電話は切れました。

 その電話から2週間後の、当日の朝。薄曇り。天気予報だと晴天。だが、なんだか肌寒い。長袖Tシャツを着込んで家を出ました。車で30分で好人舎到着。
 ところで、この飯島農園の連絡所として使っている建物を、どんな理由で「好人舎」と命名したのか。山登りに心ときめかす人のことを「山屋」と呼び習わし、その山屋さんの興味と関心を一手に引き受ける山岳用具ショップの「好日山荘」に準じたネーミングなのか、いつか飯島さんに確認しておかないといけないと思いつつ、いまだ未確認のその好人舎には、すでに田舎の学校のメンバーが出発を待っていました。
「今日はなんの研修なんでしょうか」
 そんなヒソヒソ話が聞こえます。
 ああ、分かってなかったのはボクだけじゃなかった。安堵しつつ、車に分乗して我孫子へ。

 向かった先は「財団法人 自然農法国際研究開発センター関東普及所」。
 住所は千葉県我孫子市布施2361-1。利根川と手賀沼に挟まれたあたり。さっそくに研修内容の説明が主催者からあった。
 その内容を圧縮すると、以下の2点。

 その1=生ゴミや街路樹などの剪定したあとの枝や葉を原料にした微生物処理による堆肥づくりの実際。
 その2=我孫子市という農地と住宅地が混在するエリアにあって、我孫子市民に開かれた「農業塾=むそう塾」と、微生物処理した堆肥を使っての野菜づくり、およびそれらの活動を通して広がる地域の輪。

 飯島さんが「循環型の有機農法なんだけどなあ」と言ったのは、地元で発生する生ゴミを微生物処理により堆肥に加工し、それを野菜づくりに活かすという循環、およびその循環を実践されている地元農家の玉根さんの実際を見学すること。
 でも、肝心の微生物処理による堆肥づくりって、ボクにははじめて聞く言葉で分からない。

 説明を聞くに及んで、その微生物というのはEM(Effective Microorganismsの頭文字)、つまり有用な微生物を集めたエキスのことで、沖縄の琉球大学農学部の比嘉照夫教授が発見したという。そのEMがさまざまな汚れや腐敗をきれいにする働きをもっていること。この自然農法国際研究開発センターでそのEMを作り、関東普及所近くの利根川河川敷で「農業塾=むそう塾」を展開している玉根さんがそのEMを使って、安全で美味しい野菜づくりをしているその事例を見学せていただくこと。
 これがこの日の研修の主題でした。

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↑「有気農業研究会チーフアドバイザー、農の会顧問」の肩書きを持つ佐々木健人さん。「有機ではなく有気と書きます。キの字が違うんです。中国気功のキですね」と名刺をいただいたときに、さりげなく、こだわりの部分について軽く注意喚起をしてくれた。正確には有氣と、「氣」の字を使うのだろうか。

 ところで、EMについては「EM研究機構」のホームページが分かり易く整理されているので、そちらを閲覧していただくとして、この説明の後、昼食となった訳ですが、参加者の中に、まるで仙人のような、痩身白皙の仁がいまして、さて、どんな方なんだろうと、説明を聞いている最中も気になっていました。
 ところが、幸運なことに昼食テーブルで隣り合わせとなり、昼食時間のほんの数瞬のことですが、お話することも出来たのです。
 いただいた名刺によると、お名前は佐々木健人さん。「有気農業研究会チーフアドバイザー、農の会顧問」とありました。ボクには飯島農園でシマさんという89歳の大先輩がいますが、きっとシマさん以上の齢を重ねていらっしゃると思い、「初めてお目にかかって、大変失礼なことをお聞きしますが、佐々木さんは今年、おいくつになられましたのでしょうか」と、非礼覚悟でまずは年齢確認をさせていただきましたら、「1920年の生まれです」と、右手で白い山羊ヒゲを撫でながら、
「和暦で言うと換算が大変で、それで西暦でお答えしているんです」と、目を細める。
 慌てて2006から1920を暗算で引いた数字は、実はボクの思い描いていた歳よりもちょっぴり若い。あれれ、引き算を間違えたのかしら。もう一度持参したおにぎりを掴み直す真似をしながらメモ用紙に筆算で確認。シマさんよりやはり3つも若い。でも、ほぼ同年代だ。そうか、シマさんとおしゃべりするときと同じように話せばいいんだと諒解し、こちらが兼ねてから疑問に思っていることを、素直に聞くことにしました。

それは眼から鱗の数瞬

 作務衣というのでしょうか、上衣は打ち合わせ式で、下衣は裾が足首で絞られているズボン式。素足にゾウリ。白髪白髭。おまけに対面してお話をすると、こちらの眼をしっかりと見てくれます。こちらも佐々木さんのキラキラと光る眼を覗き込んでお話が出来ます。瞳が澄んでいて、ああ、お話ししている言葉に一点の嘘偽りもないということが分かります。

 お話のキッカケはこんなものでした。

「素人の聞きかじりですが、連作障害は土中にいる線虫の仕業だけでしょうか」
 線虫については【真剣!野良仕事】[10=線虫]でも若干触れましたので、記憶の糸がまだほつれ毛のように始末がつかないままだったのです。そのほつれ毛をきれいに撫で付けられればと、質問をしたんです。線虫の働きを抑えれば、当然、連作障害は抑えられるはずで、では、どうすればその働きを抑えることができるのかが分かれば、確かな結論に辿り着くことができる。そう考えての質問でした。できれば、天敵の関係にある植物なり、昆虫なりの名前を挙げてもらえるとありがたい、と。

 ところが、答えは予想したものではありませんでした。
「連作障害の原因の主なものは、肥料のやり過ぎによる残留肥料。これが問題です」と、佐々木さん。
「植物が吸収できぬままに土中には肥料が残留し、その状態が微生物の活躍を妨げる。これが原因だと思います」と、明快な答え。
 肥料のやり過ぎが原因だとすると、肥料をまったくあげず、水もほんの少ししか与えない農法として知られる「永田農法=スパルタ農法」ならば、肥料残留は回避できる。そのように素人は考え、大胆にも佐々木さんに同意を求めるように、永田農法についての感想を聞く。
「肥料をまったくやらず、自然のままに放っておけば、連作障害には見舞われないということですか。たとえば永田農法のような」と、ボク。

 すると、佐々木さんは諭すでもなく、こう言うのです。
「永田農法はイワキでやっていますが、あれは栄養失調です」
「かなり美味しいということを言う人もいますが」
「おいしいですが、収量は少ない。どうせなら、美味しいものを多く収穫したいですよね」
 なるほど。

 なるほどとうなずいたところから、佐々木さんの独り語りとなります。不明な単語や専門用語が説明の中に入ってきても、できるだけ話の腰を折らずに聞いていようと思っていました。
「トマトは水に沈みますか。浮きますか。ほんとうに美味しいトマトは、いやいやながらゆっくりと沈んでいき、スーッと沈んでいってトンと底にぶつかって跳ねるようしている。そんなトマトが美味しいトマトなんです。500棟くらいのハウスが並ぶ大網白里のトマト農家に見学に行ったおり、生産者がこう言うんです。トマトは水に浮くもんダベ、と。生産者が美味しいトマトの味を知らない。でも、こういう生産者が出荷するトマトが年中、スーパーには並ぶ。夏野菜のキューリも年中、食べられる。でも、キューリは冬に食べてはいけないんです。もちろん美味しくないんだけど。食べてはいけない理由はショーサンタイチッソが多く残留しているから。光合成をしっかりしたキューリはショーサンタイチッソをタンパク質やビタミンに変えて美味しくなっていますが、ハウスで育てた季節外れのキューリには、ショーサンタイチッソが多く残留している。それだから旬の季節以外に、キューリを食べてはいけないんです」
 ああ、やはり聞いたこともない単語の登場だ! この単語が意味不明のままだと、この先の話は正確に理解できなくなってしまう。ショーサンタイチッソ?
「あのー、お話の途中で誠に申し訳ありませんが、その、ショーサンタイチッソって、どんな字を書くのでしょうか?」
 話の腰を折るようなこんな質問にも、佐々木さんはイヤな顔一つせずに、「ショーサンは石偏の硝酸、タイは能力の能の下に心、態度の態、形態の態です。チッソは植物の三大栄養素の窒素、リン酸、カリウムの、あの窒素です」と、こちらに分かるように説明してくれる。
 浅学で農業にはつい最近足を踏み入れた悲しさ! 「硝酸と窒素の対比」を表す「硝酸対窒素」という言葉かと思っていて、その意味がなかなか分かりませんでした。佐々木さんの説明では態は形態を表す言葉でした。性は性質を表す言葉で、態は形態を表すときに使うもので、それゆえ、「硝酸という性質を持った窒素」ではなく、「硝酸という形態を持った窒素」と理解するほうが良さそうです。要するに窒素の一種らしい。話の途中では、実は分かった顔をしてしまいましたが、ほんとうのところは、チンプンカンプンでした。佐々木さん、懇切丁寧に説明していただいたのに申し訳ありません。

 その硝酸態窒素は猛烈な毒性を持つ発がん物質で、アメリカでは『ブルーベイビー事件』として知られる危険物質らしい。ブルーベイビー、つまりチアノーゼになった赤ちゃんと言う意味で、血液中のヘモグロビンの働きを阻害し、酸素交換ができないチアノーゼ状態を引き起こす作用が硝酸態窒素にはある。何百と言うベビーが死に至ったとの報告があったそうで、
「その死亡原因は硝酸態窒素が多く残留していたチンゲンサイで作った青汁を飲ませたことによるんです」と、佐々木さん。

ベロメーターを信じよう

 昼食時間が終りに近づき、循環型の堆肥づくり現場にまもなく移動しますとのアナウンスが流れる。もっと佐々木さんの話を聞いていたい。

 そんなアナウンスが流れる中で、佐々木さんはこう締めくくる。
「結論として、安全で美味しい野菜は、露地栽培された旬の時期のもの、ということになるでしょうね」。
 お日様をしっかり十分に浴びて育った野菜たちが一番美味しく、安全!
「硝酸態窒素は野菜にも残留しますが、土中にも残留して、これがいま、問題となっているんですが、一番肝心なことは、自分のベロメーターを信じることですね。食べてみて甘かったら問題ありません。ニガかったら、残留を疑えばいい。そのときはペッと吐き出せばいいんです」
 なるほど! 自分の舌の感覚を大切にするってことだ。
「それだけのことです。そのようなことは植物に教えられたことです」といって、佐々木さんは別なグループへと移っていきました。
 ベロメーター!
 この研修での一番の収穫がこの「ベロメーター」でした。自分の舌で判断する大切さ。循環型よりも一層印象の残る考え方でした。それ故に、眼から鱗の数瞬だったのです。

 それでも、どうしても分からない言葉でしたので、自宅に帰ってからもう一度おさらいの意味で調べてみました。「硝酸態窒素」。

「硝酸態窒素」について、グーグルで「硝酸態窒素」を検索したところ、195000件のヒット。そのうちから、「化学肥料は、なぜいけないのか」「pdf資料 千葉県の地質環境と硝酸態窒素汚染地下水の深度別変化」の二つが簡明でしたので時間をかけて読んでみました。

「化学肥料は、なぜいけないのか」の説明文中、こんな説明文がありましたので、引用してみます。
「最近妙にほうれん草や小松菜の色が濃いなぁ、と思われた事はありませんか。そして昔よりえぐみがあるようにお感じになった事は。そんな野菜は湯がくとお湯が真黄色になります。その色や、苦味の正体は「硝酸態窒素」。土壌中の化学肥料である窒素が形を変えたものです。植物(作物)は、光合成によって造られた糖とリン酸により窒素をたんぱく質に変える事で成長して行きます。窒素を多く与えればそれだけ作物は青々と濃い緑色になります。なぜそうするのかって。それは、緑黄色野菜は色の濃い方が栄養がありそうで消費者が喜ぶからなんだそうです。」

 もう一つ、「千葉県の地質環境と硝酸態窒素汚染地下水の深度別濃度変化」は吉野秀夫・千葉県議のレポート(2005/3/27)で、農産物出荷額上位にランキングされている千葉県での県内調査だけに、世界的に見ても画期的な調査だとか。

 なお、同じグーグルで「佐々木健人」と検索すると、78800件のヒット。「掲載:札幌タイムスMay 7th.2004佐々木健人先生からの激励文」を開いて見ると、以下のような紹介文があります。
====「有氣農業」は、佐々木健人氏(在東京)が創造されたものである。「有氣農業」と書くと、「有機農業」の間違いではないかと、問われることがあるが、印刷の間違いではない。
 さて、「有氣農業」について、いささか具体的に述べておく。
 この「有氣農業」は、有機質のものを使うという点で「有機農業」と共通する。ただ、「有機農業」では完熟堆肥が使われるが、「有氣農業」では堆肥を使わない。健人先生曰く「完熟堆肥は肝心な肥料分が抜けてしまったエネルギーの燃えかすだ」。生あるいは半生の有機質(牛糞・豚糞など)を、直接に土壌に鋤き込み、そこに土壌活性剤を散布する。このような農法では、土壌中微生物が活性化して、土中の色々な成分が、大いに作物へ吸収される。このような作物栽培をすると、たいへん栄養価の高いものができる。====
 そうか、大変な先生と隣り合わせてしまったのだ。なんて運がいいんだ。

 ところで、この二つのページ、「化学肥料は、なぜいけないのか」と「pdf資料 千葉県の地質環境と硝酸態窒素汚染地下水の深度別変化」だけは、時間があったら読んでみてください。それではまた。(hasegawa tomoaki)

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↑研修先の利根川河川敷にある玉根さんが指導している畑にて。両サイドにエンバクを植え、白統小蕪を植えた畝。ボクが感心したのは、播種した日にちを明記して、誰にも分かるようにデータを公表している点。こうすると、成長の具合が微妙に対比できる。備忘録としても有効。自分の畑でもぜひ、やってみよう。

飯島さんからの伝言
[14=落花生畑 IN AFTERNOON TEA]で、飯島さんのお母さま、シマさんに欠株のことや落花生のことを聞いた話を紹介しましたが、そのおり、ただ単にシマさんが早く落花生を植えたから早く収穫しているんだと思っていたんです。そこで、飯島さんに「ボクが植えた畝の落花生はいつごろ収穫すればいいんでしょうか」と聞いてみたら、以下のような返答がありました。どの業種もそうですが、農業もなかなか教科書通りにはいかないんですね。その年の天候とか、植えた場所とかの様子を見ながら、さまざまに対応していかなくてはいけないということが分かりました。
 以下、落花生収穫についての伝言。
落花生ですが、葉が青々しているうちはそのままに。霜が降りるまで育てます。
シマの落花生は平年に比べ異常に早く生育してしまいました。
葉をみると黒っぽくなりはじめています。そうなると、それ以上そのままにして置くと、落花生の紐と呼んでいますが、子房柄が弱り、茎を抜いた時、土中の落花生がプツプツと切れてしまい、ついてきません。そうならないうちにシマは掘りあげたのです。
生で食すには早めの未熟がおいしいです。煎り落花や、油味噌いためには十分育て、収穫し、ひなたで1週間から10日かけて十分に乾燥させます。

by 2006awasaya | 2006-10-17 00:28 | 真剣!野良仕事


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