【真剣!野良仕事】[18=リンゴの収穫]

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↑群馬県が開発・改良した自慢の品種「陽光」の完熟の色。ズボンでゴシゴシ磨くと、不気味な艶やかさになるので、あまり磨かずに食べることにしています。そのままかじると食べ残す部分が多く、勿体ないので、6等分にしてからきれいに皮をむいて余さぬようにシャリシャリ音を立てながらいただきます。写真のリンゴは大きな部類でほぼ原寸です。

果樹栽培の革命か

 文化の日の連休を利用して、群馬県の川場村にリンゴ狩りに行ってきました。
 澄んだ空気を透かして、何やら東京あたりが見えそうな、見えなさそうな、とにかく抜群の上天気。
 この川場村には10年前からリンゴの木のオーナー制度に参加して、途中1年は都合で収穫に行けない年もありましたが、それ以外はきちんきちんと毎年、この文化の日の前後に、関東平野の北辺に行ってリンゴ狩りを楽しんできました。
 知り合いのカメラマンさんから「とっても研究熱心なリンゴ園のおやじさんがいてね、とってもおいしいリンゴを作るって評判なんだけど、どお、一本、買って見る気はないと」と誘われたのがキッカケでした。
 なぜか「研究熱心」という言葉に魅せられて、リンゴの木のオーナーになったのでした。根が『研究』とか『熱心』からずいぶん遠いところにいますので、誘蛾灯に誘われる蛾のように、自分の意志を超えた神の手に鷲掴みされたように1本、登録したのでした。
 ところで、その「研究」がなんであるか、ちょっぴりあやふやになって、昔の日記をめくるように頭の中をかき回していると、側頭葉の辺境から浮かび上がってきました。こう言うときは10年日記をつけていると、すぐに振り返ることができるのにと、いつもいつも思うのですが、なかなか付けられないものです、日記って。
 それはさておき、その研究というのは、一本のリンゴの木に3種類のリンゴを実らせるという研究でした。
「低いところにフジ、中程の高さに群馬県産の陽光、一番高いところに未収穫になっても、ま、鳥の餌になってくれればいいか、そんなシャカリキにならなくてもすむ国光とかの品種を実らせることができれば、これはひょっとしたら、果樹栽培に革命をもたらすことになるかもしれない研究をすすめているリンゴ園があるんだけど、そんなすごいリンゴの木のオーナーになれば、3種類の味を楽しめるんだよ。でも、今年もダメだったんだって。なんとか慰めてあげないと。収穫時期と台風が不思議と重なったりして、林檎農家って、ほんとうに大変なのに、その上、難しい研究をしてるってんだから、つくづく頭が下がるよね」という説明だったのです。
 心は大きく傾いて、しかもオーナーって言葉の響きもバブリーで、1本1万5000円という料金も魅力でした。下草を刈ったり、肥料をやったりなどのいわゆる「労働」はなしで、秋になるとたわわに実っているリンゴをもぎに行くだけの安易さが保証されてこの料金です。
 で、はじめて行ったリンゴ園での収穫の最中、ずっと気になっていた「果樹革命の正否」について、約300個を収穫し終え、再び戻ったリンゴ農家の母屋で、革命の真実を研究熱心なおやじさんに聞いてみたかったのですが、あいにく姿が見えません。
 きっと、研究がうまくいかなくて、人前に出るのが恥ずかしいのかな。おやじさんの姿が見えないことを、そんなふうに勝手に解釈していました。
 でも、やはり聞いてみたい! そこで荷造り作業中の奥様に尋ねてみたんです。きっと女性の目から見ると、男には見えない、あるいは、見ようとしないご苦労があるに違いない。
「今年はダメだったと聞いたんですが、そのあたりのお話、聞かせていただけますか」と。
 研究の成果が実らずに、でも来年に向けてもう準備が始まっているかもしれません。しかも、人知れず傾注したであろう努力が報われなかったのですから、できるだけ傷口にさわらぬように、でも、聞きにくいことながらきちんと聞きたいことを聞いておかなくては。
 すると奥様、さばさばした口調で、
「ええ、今年もだめだったです」
 なんとも簡潔な返事。
 あれれ、ガッカリしているヒマなんてないってことかしら。
 でも、それにつづく言葉を聞いて納得しました。
「でも、いつでもできることなんです。簡単なことなんですよ、3種類を接ぎ木すればいい話ですから。接ぎ木自身も、いつもやっていることで別に難しい技とかは必要としませんしね。とおちゃん、たいへんだ、たいへんだとかなんとかいってましたか。あはは」
 あははと、明るく笑われてしまって、ボクも、こんなに明るく笑ったことはなかったなと自分でも驚くほどに大きな口を開けて、大きな声で思いっきり奥さんと一緒に笑っちゃいました。
 ひとしきり笑い終わったところに、「たいへんだ」のとおちゃんがちょっぴり額にしわを寄せ加減にしてやって来て、「なんだなんだ」なんて好奇心抑え気味の顔で僕らの顔をのぞき込むものだから、また大笑い。いはやは、おもしろかったな。こんなに気持ちよく担がれたことも、記憶にないな。カメラマンさんと研究熱心なとおちゃんの合作担ぎばなし。果樹農家でやっていることをまったく知らない都会組は、おしなべてこの手の話に弱いなあ。
 気持ちよく担いでもらってはや10年。毎年毎年、秋になると川場村に出かけ、真っ赤に熟した陽光を摘み取る。車のトランク一杯にして持ち帰り、ご近所に配る楽しみ。
 そして、毎年、ほぼ同数のリンゴを枝に実らせることの大変さも、ほんのり分かってきて、しかも同じような糖質を維持しているんですから、果樹農家の方の管理能力って、それはそれはすごいことだと感心感服。
 今年の川場村もこの時期は全村、リンゴの収穫時期。どこの農家も忙しそうにたち働いていましたが、今年のリンゴはほとんどの農作物同様、日照時間の不足で、例年に比べて若干甘みが少ないようです。でも、収穫って、なんて嬉しいものなのでしょう。今年、地元船橋で憧れの畑仕事をはじめただけに、実感できるこの気持ち。リンゴの木も大きな大きな実をモイでもらって、背が高くなっているように見えました。(hasegawa)
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↑左手前の木が10年間、楽しませていただいた木です。毎年毎年、300前後の実を収穫できるんです。下草もきれいに刈り込んであって、この樹間に寝っ転がっていると気分もとっても安らぎます。今年は親戚と一緒にリンゴを摘み取ったので、あっという間に収穫完了。やはり農業は人の手をいかに集めるかということも大切なポイントですね。
by 2006awasaya | 2006-11-08 19:20 | 真剣!野良仕事


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