【真剣!野良仕事】[20=多古町BRAぶら]

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↑こんな案内看板に誘われて里山を歩いてめぐるのです。行く先々においしいものが待ち構えているんです。
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↑佐藤なかさんちの行事料理。縁側にずらり並んだ行事料理を摘みながらカシャカシャとデジカメで撮ってきました。そのずらりを一気に公開。その1=漬け物。
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↑佐藤なかさんちの行事料理。その2=ゆずの香りがきいた膾。
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↑佐藤なかさんちの行事料理。その3=サトイモの煮物。ヌメリといいホクホク加減といい、とても上品なお味でした
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↑佐藤なかさんちの行事料理。その4=ニンジンとゴボウのきんぴら。これも人気でした。
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↑佐藤なかさんちの行事料理。その5=これ、食べませんでした。ごまめのような、すいません。好き嫌いでチョイスしてしまって。
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↑佐藤なかさんちの行事料理。その6=レンコンの酢の物。さくさくぶりがさわやかでした。
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↑佐藤なかさんちの行事料理。その7=ニンジンの煮物。分厚に切ってくれているので、素材の味がみな、生き生きしていました。
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↑高橋文江さんちの、絶品「ヤマトイモのきんとん」。見た目では到底判断できないほっくりした甘さ。もう、これは食後のデザートです。


美しい里山で食べ歩く

 千葉県多古町の「BRAぶら しんのみまつり」に行ってきました。先週11月11日(土)。そもそも、この祭りについてはほどんど知りませんでしたが、こんな経緯で行くことになったのです。

長谷川 生産者は野菜や果物やお米を作っていればいいという真摯な姿勢も頼もしいでしょうが、時には自分達が働いている畑の様子や働く姿を消費者に見てもらうことも必要じゃないでしょうか。船橋農産物供給センターの企画で、野菜づくりの現場見学を兼ねたワンデイ日帰りミニ旅行を企画しませんか。
飯島 いやあ、ちょうど同じような発想の企画が多古町でやってるんで、行ってみませんか。「BRAぶら しんのみまつり」っていうんです。イタリアのブラっていう農村で生産者が消費者を受け入れながら農村観光を実践している町があって、スローフード・スローライフ発祥の地なんて紹介のされ方をしているトリノ近郊の町なんです。世界的に有名な町なんです。その町の考え方を多古町が導入してもう何年になるでしょうか。多古町のこと、知りませんでしたか。ちょうどいい、僕のところに多古町から招待券が来ているので、一枚差し上げますわ。一緒に行きませんか。

 こんな会話があって、それで加古町まで行ってきたんです。でも、ボク、多古町がどこにあるのか、ぜんぜん知らなかったので、さっそく多古町のことを、多古町旬の味産直センターで調べてみました。
 成田空港の東に位置する農村で、「おいしいお米は市場に出回らない」という法則を地でいく「多古米」で有名なんだそうです。なんでも、昭和38年に昭和天皇の献上米に選ばれ、昭和46年には札幌で行なわれた「全国自主米品評会」において、食味日本一に輝いたんだそうです。ああ、そんなうまいお米なら、ぜひにも食べてみたい。

 それから1週間。長閑な農村で繰り広げられる「BRAぶら しんのみまつり」に出かける当日の朝、船橋は嵐の前の無気味な空模様。出掛けるのがためらわれる真っ黒な雲が全天を覆っていて、なんだか雷鳴が遠くで聞こえます。いやな空模様だなあと、運転をしながらスピードを抑え気味に車を走らせました。飯島農園の集会所もかねる好人舎に8時集合ということだったのですが、到着した時には雷鳴が真上まで来ていて、大粒の雨粒もぱらぱら。天気予報によると午後から雨ということでしたが、予定より早く雨雲の到着。という間に雨脚が激しくなってきました。キース・ジャレットのバッハの平均率を雷鳴に負けないくらい音量を上げながら車の中で待っていると、そこへ雨具をかぶった飯島さんが走ってきて、「雨対策を畑に施してから多古町に出かけることにします。出発時間は遅れますが、お許しを」と告げ、慌ただしく軽トラを走らせていずこへ。
 20分程経ったでしょうか、雷鳴轟く中での作業を終え、戻ってきた飯島さんの開口一番の台詞が振るっていましたので、再現します。

飯島 いやあ、すごい雨でしたね。出掛けにシマからこんなことを言われましてね。「朝の雨と女の腕まくりは恐れるな」と。
長谷川 雨と女がどうしましたか。
飯島 いえいえ、朝の雨と女の腕まくりです。朝の雨が丸一日続くわけがないってことなのか、それは良く分かりませんが、要するに恐れるには及ばないから、予定を変更せずにしっかり仕事、しなさいよってことなんでしょうな。
長谷川 おお、そんな見切った表現があるんですか。腰の据わった凄い台詞ですね。さすがにシマさん。

 ちょっぴりはしゃいだ、そんなおしゃべりをしながらのドライブでした。

 千葉北から東関道に乗って大栄で下り、多古町へ。1時間ちょっとで指定の駐車場。雨は降っておらず、よかった、よかったと胸を撫で下ろし集合場所へ向かう途中、太い青竹をカットした飲みもの容器の竹筒が手渡される。濁酒なんかが振る舞われたら、車の運転だからって断らなくてはいけないし、ああ、困ったな。と思いつつ、隣りを歩く飯島さんを伺うと、なんだか嬉しそう。飯島さんは今回は助手席の人なので、飲める人。ああ、悔しい! そんなウキウキした気分で廃校になった小学校の校庭へ。

 受付を兼ねたまつりの会場。参加費大人1500円、小中1000円、3歳以下500円、乳児100円。ボクと飯島さんは招待券がある。この受付で、まつりに協力してくれる農家9軒をめぐるmapとタッパウエアとお箸をいただきます。何が食べられるのか、もうワクワク。会場にはおよそ200名前後(数えた訳ではありませんので悪しからず)の参加者もなにやら嬉しそう。主催者の挨拶があり、五月雨式に指定された農家へmapを見ながら移動開始。

 mapには農家のお名前と供される得意料理名が記されていて、例えば会場から時計回りに、平山政勝さんちでは赤米で作った甘酒、佐藤なかさんちでは行事料理、藤崎和久さんちでは旬な野菜のいろいろテンプラ、高橋まき子さんちでは芋あんのなつかしい田舎まんじゅう、高橋文江さんちではお花のハウスの中でおこわとヤマトイモのキントンなどのふるさと料理、佐藤久子さんちではお抹茶接待と野菜の煮物、神社境内では味の沁みたおでんとほかほかお赤飯、堀仁さんちでは樽酒、佐藤さち子さんちではみたらしだんごという具合に、みな心をこめて作ってくれた振る舞い料理で接待してくれるのです。そのために汁ものには竹筒、お赤飯や野菜の煮物などをいただくときにはタッパウエアが役に立つって訳です。

 参加者は中年の女性、いわゆる「おばさん」が多く、大口を開けてむしゃむしゃ、美味しいと「めちゃ、おいしいわあ」と嬌声をあげて知らぬ同士でも和気藹々。農家の方々も、おばさんパワーに負けることなく、「さあ、どんどん召し上がれ」とばかりに、次々に食材を調理し、補充してくれます。
 今朝方船橋を覆った雨雲が3時間遅れでこの多古町にも移動してきましたが、みなさん、事前に傘やビニールコートなどの準備がしっかり行き届いていて、いささかも慌てることなく、雨の中を食べ歩きます。それほど美味しいってことだったのでしょうね。まさに食べ歩き。食べて歩いて、また食べて。一カ所に留まって、ひたすら食べまくるのではなく、ほぼ100メートル間隔に案配されたお宅を訪ね歩くのですから、満腹感もすぐに解消されて入ること入ること。「ああ、食った食った」と、下腹をさすりながら大きな声でおしゃべりしながら歩く意欲満点のおばさまたちの列は健康そのもの。

 テンプラをいただいた藤崎さんちから田舎まんじゅうの高橋さんちに至る小径は、とくに素敵でした。京都の「哲学の小径」はいまでは観光客でいっぱいで、自分を見つめるどころか、他人ばかりしか視界に入ってこないので、たいそう疲れ果てて散歩を切り上げることになります。思索を深めるどころの騒ぎではありません。哲学をしたいなら、京都ではなく、里山を縫うようにして発達するこの多古町の道がふさわしいのではないでしょうか。このあたりは家屋敷をブロック塀などで囲わず、槙の生け垣で囲んでいますから、当たりがとても柔らかいんです。もしも「里山」に日本標準のようなモデルが必要だとすると、この多古町をあげない訳にはいきませんね。

 会場準備、料理の仕込みや町内清掃など、大変なご苦労を地元農家に依存しているはずですが、年に一回のこうした催しは、きっと農家にも素敵な非日常として記憶されるのでしょう。飯島さん、素敵な里山に連れて行っていただき、どうもありがとうございました。
(hasegawa tomoaki)
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↑多古町からの帰りがけに、落花生の野積み(ボッチ)風景がいくつか見られました。このブルーシートを被せるのが今では一般的だそうです。
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↑いまではこの写真のようにワラの屋根を被った野積みは大変貴重なシーンだそうです。
by 2006awasaya | 2006-11-16 11:16 | 真剣!野良仕事


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