【真剣!野良仕事】[30=味噌づくり前編]

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↑味噌づくり前日の2月17日、好人舎前に張り出された一枚の張り紙。ボクは所要があって午前中だけ竹薮整備に参加。この張り紙に怯えつつ、早引けしてしまいました。

饒舌と寡黙で仕込んだ今年の味噌(前期)


「冬の時期、農家は一年で一番忙しいのかもしれないんです。農閑期、農繁期という言い方をよく使いますが、四季でいうと春夏秋の3シーズンが農繁期、ほとんどが草取りと収穫です。そして冬が農閑期。その農閑期には、雪降り積む東北の湯治場で一年の疲れを癒す風景がテレビなどでよく報じられますが、あくまでも米作りがベースの考え方で、農繁期、農閑期と言う言葉自身が野菜農家ではあてはまらないし、米農家でも年間スケジュールとずれている部分もある。それに、専業米農家はあまりこの辺りではいなくなってしまって。ええと、そこでです、じゃあ、この時期、農家は何をやっているかと言うと、一年分の味噌づくりをまずやるんですわ。その味噌づくり、皆さんもやってみませんか」
 こんな独白とも勧誘とも提案ともとれる呟きを昨年末の『望年会』の席で飯島さんが漏らしたことがあって、耳ざといメンバーが、「ぜひぜひやりましょう!」「なになに、面白そう!」「え、やりたかったなあ!」
 そんなこんなの反応が顕在化して、その日が来たのです。

 この「おいしい野菜公園2007」というグループは電子掲示板と言うか、mailで情報を共有していることは以前に書きましたが、その伝言板に飯島さんからこんな書き込みがあったのは2月3日のことでした。


新年会の折、このメンバーに新しく加わった金谷さんといっしょに麹づくりをしたのですが、その麹を使っての「みそ作り」に参加しませんか。

【当日の段取り】
 みそ作りの段取りについて説明しておきます。
・2月17日(土) 大豆を水洗いし、釜に入れ、水に浸しておきます。千葉県野田産の大豆です。
・2月18日(日) 6:00になったら釜に火を入れます。だいたい5〜6時間かかります。
・まず、麹をほぐし、塩をまぜておきます。
・豆が煮えたら水を切り、冷まします。
・40度まで冷めたら、麹・塩をまぜ、機械に入れてミンチ状にします。
・ミンチ状にしたものを手で団子にします。空気を抜くことが目的です。
・団子状にしたものを、やはり空気を抜くために投げ付けるようにして容器に入れ、空気が入らないようにぎゅっと詰めていきます。
・詰め終わったら最後は仕上げですが、表面を平らにし、アルコールを含ませたパーパータオルを表面にかぶせ、その上をラップで覆います。
・釜の火入れを除き、5〜6時間かかります。

【当日用意するもの】
・髪をおさえるもの、例えばシャワーキャップ、帽子、手ぬぐいなど。
・当日9時30分、好人舎集合。



 以上のような伝言にそれぞれが参加、不参加のメッセージを返して、いよいよ当日を迎えました。

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↑味噌づくり当日の2月18日、好人舎バックヤードにて飯島さんから作業段取りと大豆の煮え具合について説明されるメンバー。湯気に霞んでお互いの顔もボンヤリ。

 東京都心が3万人ものランナーに占拠された「東京マラソン」当日のこと。生憎、前夜から雨が降り出し、船橋では雨足が弱まる気配もなく、「こんな天気でもマラソン、やるのかしら」なんて話題を挨拶代わりに集まってきたメンバーを前に、まずは飯島さんから味噌づくり挨拶。
「これから作る味噌ですが、食べられる状態になるのがだいたい8ヶ月後です。大豆は野田産を使います。輸入物におされて、しかも夏場、枝豆として出荷すると結構な高値で売れるということもあって、なかなか入手困難な野田産大豆を手当てしました。塩は赤穂の天塩です。昨日からヒタヒタの水加減で漬けておきました。今朝、釜に乗せて火を入れ、いま、およそ3時間。大きな寸胴からも小さな寸胴からもいい匂いがしてきましたが、蓋をとって見てもらえば分かりますが、この水加減がなかなかむつかしいんです。たえずヒタヒタ。大きな杓子で返し返し、かき混ぜて煮ているところです。怪我のないよう、注意して作業を進めていきましょう」
 飯島さんの説明を聞きながら、湯気を立て大きな寸胴を囲むように、メンバーが群がる。
「ちょっとかき混ぜてみてください。力任せにかき混ぜると寸胴がひっくりかえって大やけどをしますから注意して。どうです、煮えてきましたか」
 大きな杓子で掬う。
 皆の手が伸びる。
「うーん、うまい」
「煮ただけで、結構甘いんだ」
「香りがいいね」
「煮汁がもったいないね。畑に撒いてこようか」
 煮豆についての感想、各人各様。

作業は進む

 さて、飯島さんからのmailメッセージにあったとおり、作業は進んでいきます。
 さっそく3班に作業分担し、1班は煮豆班、2班は麹と塩の混合班、3班は作業場全体清掃洗浄班。
 と言っても、こんなふうに飯島さんからいちいちの班分け指示を待って作業をしている訳ではなく、各人の判断でそれぞれが体を動かしているのです。参加メンバーは味噌づくりが初めてなだけで、みなさん、立派な人生経験者なのです。「指示待ち人間」をとっくに卒業された方々ばかり。全体の段取りさえ飲み込んでしまえば、周囲と調和しつつ、体を動かしていく。それらの作業をチェックしながら飯島さんが見回っていく。疑問に思ったことは、見回り巡回に来た飯島さんに質問する。
 たとえば、煮豆班でのこと。
「なにをもって豆が煮えたと、判断するんですか」の質問に、
「えッ? 豆が煮えたかどうか? 食べてみるんです」
 飯島さんの一瞬の絶句、分かります? 食べてみれば分かるじゃないですかと言う顔で質問者の顔を見つめ返されてしまったのは、なんとこのボクでした。ああ、恥ずかしい。
「食べてみて柔らかく煮えていれば、指先でつまんだときも、耳たぶ程度の弾力だってことになりますよね。厳密に何時間煮るとかではなく、加減を見て、摘んでみて、食べてみて、柔らかく煮えていればいいんです」と、言わずもがなのことを言ってしまって、すこしバツの悪そうな表情をしてから、こんなふうに話を転がしていくのが飯島さんのいい味。
「豆には胚芽をカバーしている部分で色が違うの、分かります?」
 大豆にはシロメとチャメがあり、シロメは主に料理用、チャメは味噌用に使うのだそうです。こんな違いが小さな大豆に潜んでいたか。で、どんな字を書くんですと質問しそうになる。はっ!

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↑これがチャメ、漢字で書くと多分、「茶芽」。ひょっとすると「茶目」かも。味噌醤油用と言うが、ボクにはこちらのチャメの方がおいしかった。
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↑これがシロメ、漢字で書くと多分、「白芽」or「白目」の大豆。ずいぶんきれいな大豆。5-6粒口に含んで噛む。チャメよりも粘り気が感じられた。主に料理用とか。
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↑まだ分かりにくいなあ、もっと確信納得ができる写真、ないの?という方もいるだろうなと思って、一応おさえておきました。ドーダ、これで納得?

麹屋のハカリゴト

 麹と塩の混合班ではこんなエピソードを披露
「昔はそれぞれの町に麹屋があって、例えば10キロの米を持っていくと、10キロの麹となって返ってくる。麹屋に持っていく米は最高のを持っていくんですわ。でも返ってくるのはごくふつうの米で作った麹。自分で作れるようになって初めて、そのからくりに気がついたって訳です。しかも自分で作って分かることはたくさんあるんですが、10キロ作ると12キロの米麹になる。2キロ刎ねられていた!」
 
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↑麹のフネに塩を混ぜます。麹1に対して塩0.5の割合。
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↑麹と塩を混ぜると、ベタベタになるのかなと思っていましたが、意外と言ってはなんですが、さらさらしています。

 さて、そろそろ豆が煮えてきた。
 さっそく、ザルに移し、冷まします。湯気もうもう。
 お隣ではステンレス製の大きなフネで麹と塩を混ぜ、ザルに空けた豆が40度に冷めるのを待っている。
「40度以上だと、麹菌が死んじゃう。で、冷ました豆が40度になるのを、どうやって確認するか。温度計を使うのが一番正確ですが、ガラス製品は作業途中に落としたり割れたりする。そんなとき、40度をいかに確認するか」
 飯島さんから振られて、一同声なし。立派な人生経験者と胸を張ったばかりなのに、もうションボリ。
「あはは。湯加減ですわ。お風呂の湯加減を見ますよね。熱いか、ぬるいか。手を突っ込めばいい。仕事が早いか否かは、こんなちょっとした経験の差の積み重ねですわ」と言いながら、「みなさんの分の容器が品薄で足りないので、探してきます」と、車に乗って出かけてしまった飯島さん。メンバー、置き去り状態。

閑話休題 オケとタル。どう違うのか。秋田杉を使った超美的堅牢な桶樽を以前、仕事で取材したことがあり、その違いは実に明快。桶は底がある容器。樽は桶に蓋がある容器。もちろん、形状は円筒形。

飯島さん、帰還

 好人舎のバックヤードに残されたのは、クールダウンを待つ煮豆と、麹と塩が1:0.5の割で混ぜられたステンレスのフネ、さらにミンチ機から押し出されてきた粘土状味噌をオケ詰めする部屋、それに立派な人生経験者11名と麹担当の聡明な青年1名。
 お昼時になり、各人がお昼を済ませても、まだ飯島さん帰らず。

「40度以下に下がっちゃったけど、大丈夫かなあ」
「出かけるときに、麹と塩のフネに煮豆を移すときは自分が合図を出すって言って出かけたから、まだ混ぜられないし、ま、気長に待ちましょ」
「携帯に連絡してみましょうか」
「よんどなにかがあれば、連絡してくるでしょ。待ってましょうよ」

 やがて、いくつかのポリ製オケを抱えて飯島さん、帰還。全員、安堵。

 以上、味噌づくりを大きく前期と後期に二分し、大豆を洗い、水に漬けてから豆を煮て、ザルに空け40度に下がるまでを前期、そして、麹1:塩0.5:豆1の割合に混ぜ、ミンチ機にかけてからオケづめを完了するまでを後期とすると、本日の報告はここまで。後期はほとんどが室内での作業となるので、寡黙を保っていた方も饒舌になるなど、雰囲気は一変。乞うご期待!
by 2006awasaya | 2007-02-19 10:00 | 真剣!野良仕事


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