【真剣!野良仕事】[36=竹林からの絵手紙]

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↑4/7に行なわれた『竹林コンサート』。そのおり、お茶目な三人組の乙女たちをご紹介しましたが、そのうちのおひとりが飯島さんに宛てた絵手紙。なんとも素敵な絵手紙なので、ここに紹介させていただきました。

春の香りを調理する

 確か4月24日の夕刻でしたか、「長谷川さん、いま、大丈夫?」と、飯島さんから電話あり。はいはい、大丈夫ですと返答すると、「ところで、井上ひさし、好きですか?」 大学の遥か先輩に当たられる作家さんです。ましてや米をはじめとする農産物の諸問題に対しても大変な時間を費やしてウオッチングしている稀代の作家さんをつかまえて、好きもキライもある訳がなく、ただただ畏れ多いの一言ですが、そんなこんなで返事に窮していると、「井上さんの作品で『紙屋町さくらホテル』という芝居があるんですが、ご存じ?」「ええ、知っています。こまつ座でしたかね」「ええ、その公演が船橋であるんですが、行きません?」「うーん、えーと」「明日なんですが、行けます?」「え、明日?」「ええ」
 こんな会話を交わして、急転直下、こまつ座公演に行くことになったのです。
 電話を切る直前に、「阿部さんから大変なものをいただいちゃいまして。長谷川さん、調理していただけると嬉しいのですが」という謎めいた物言い。

 実は2週間ほど前の4/1に飯島さんから「だって、エイプリルフールですものね」なんて軽く担がれて、とんだホロ苦い思いを奥歯で噛み締めたばかりだったこともあり、飯島さんの発言には多少の警戒心を発動していた矢先、「大変なもの」「調理してください」ですもの、さて、なんだろうという疑念が先に立って、「それでは明日の夕方、楽しみに会場に伺います、時間に遅れずに伺います」と電話を切ったのです。

 この日と翌日は、結構真剣に仕事が立て込んでいて、ほんとうのところ、芝居どころではなかったのですが、「阿部さん」「大変なもの」「調理してください」が三題噺のごとくにいろいろなストーリーとなって頭蓋を飛び跳ねていたので、一刻も早くその「いただきモノ」を見てみたかったのでした。もちろん、こまつ座の公演も三題噺とは別に魅力的で、頭の中の仕切り線と言うか、パーテーションの仕切り分けがまったく上手く行きませんでした。仕事100%だったものが、飯島さんのお誘いを受けた直後、仕事20%、阿部さん三題噺45%、こまつ座35%といった仕切り分けになってしまいましたもの。

 阿部さんという方は、ボクと同じく、飯島農園のオーナー制のメンバーで、山形県のご出身。いつもご夫婦で畑にお見えになるんです。ご主人は酒田、奥様は鶴岡のご出身で、ともに庄内。いや、雰囲気から言うと庄内藩というか「海坂藩」の作事奉行って感じなのです。

 そんな山形方面と関係あるモノに違いないけど、はて。ふるさとのお土産で飯島さんがちょっとばかり興奮するものと言えば、おいしい枝豆の「だだ茶豆」かな、ふるさとの豪商・本間さま関連の何かかな、はて、なんだろう?

 実はボク、昔から山形びいきで、東北6県の中でも群を抜いて山形が好きでした。
 仕事の関係で秋田の湯の国ぶりが好きな時期があったり、岩手の高潔が好きで好きでどうしようもない時期もありました。宮城の伊達っぷりが妙にまぶしい時もありました。福島は会津にしか興味が持てないこともありましたが、とにかく広大で、浜通方面は目を向けたこともなく今に至っています。青森は北辺過ぎて、焦点を結ぼうにも霞んでしまって、イメージを結ぶのに目を細めなくてなりません。そこへいくと山形はほどよい距離でいてくれることもあり、しかも、源流から河口まで一県内で完結する最上川がしっかり県内各所を潤しているようで、その様子を思うだけで心が和んでくるのです。一川一県が県としての十分条件と考えているので、この一事で「ああ、自分は山形県が好きなんだなあ」と思っているのかもしれません。

 とにもかくにも必死になって仕事を始末し、自宅から徒歩10分で駆けつけた船橋文化センターはたいそうな混雑ぶり。ありがたいことに、観劇のお客さんは圧倒的に女性が多く、飯島さんを見つけるのに困難は感じませんでした。ああ、はやく阿部さんからのあずかりものを見たい!
 そして、飯島さんから見せていただいたのが「阿部さんからの絵手紙」だったのです。「阿部さん」「大変なもの」「調理してください」の三題噺、ボクの中では見事にオチがついたのでした。飯島さんの考え方、言葉の順列、面白がりよう、そんな部品の組み合わせ方が形になったようで、こまつ座公演『紙屋町さくらホテル』のスターである辻萬長扮する海軍大将長谷川清の律儀に共鳴する一方で、大いに得心したものでした。

 ところで、阿部さんの絵手紙の中に、なんだかとっても変わった落款が捺してあります。よくよく見れば絵とも文字とも見えますが、ひょっとして秘密の暗号か? どうにも分からないので、電話をしてしまいました。

長谷川 夜分、まことに申し訳ありません。あの、飯島さんに出された絵手紙に捺してあった落款なんですが。
阿部 ああ、あの落款のこと? いま、絵手紙を書いた本人がすぐ横におりますから代わりましょう。
冨美子 あの、もしもし、代わりました。
長谷川 突然で申し訳ありません。唐突な問い掛けで申し訳ありませんが、あの落款が妙に気になりまして。あれは絵でしょうか、それとも文字でしょうか。
冨美子 ああ、あれね、あれ、トンパ文字っていって、中国旅行をしたおり、雲南あたりだったかしら、面白いなと思って、自分の名前を彫ってもらったの。
長谷川 自分のお名前って言うと、漢字一字に絵文字が一字って関係になってるんですか。
冨美子 一番上右の文字は大きな声で「アーッ」と叫んでいる形だそうです。一番下の文字は子供が楽しそうに踊ってるって文字で、漢字では「子」に相当するということでした。
長谷川 ああ、なるほど。言われてみれば、そのようにも見えますね。いいですね、トンパ文字って。古代エジプトのヒエログリフみたいなもんでしょうかね。

 なお、webでトンパを検索していたら、優秀なページがいくつもあり、一番気に入ったのが雲南納西族トンパ文字でした。また、古代エジプトのヒエログリフについてもwebで閲覧してみました。こちらもいろいろなページが運営されていまして、なかでも基本的なことから説明されているヒエログリフの部屋がよかったように思いました。いちど覗いてみてください。

 なるほど、納得がいきました。どうもありがとうございました。

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↑長谷川の理解が大きく外れないように、電話を切った数分後に阿部さんからmailをいただきました。そしてこの写真が添付されていて、こんな説明も添えられていました。「2000年3月に麗江古城(四方街)-世界遺産-を散策した時に、買い求めたトンパ文字の印です。名前を漢字で書いて、トンパ文字(象形文字)で彫ってもらったものです。阿と言う字は、大声で【アーッ】と叫んでいる形だそうです」
by 2006awasaya | 2007-05-07 23:35 | 真剣!野良仕事


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