【真剣!野良仕事】[79=アイガモ農法☆管見記=1]

2008.6.11(水)
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↑6月1日(日)に産まれ、1週間後のこの日、6月8日(日)に放鳥される山田農場のアイガモたち36羽。
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↑放鳥会には約30名の参加者が集合。1人1羽を田んぼに放つ。
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↑お尻を小刻みに振りながら、田んぼを健気に動き回るアイガモたちを見て、思わず知れず「ガンバレ!」と声援を送り人生の門出を祝う面持ちの参加者。
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↑大海に放たれたのに、なぜか、てんでんバラバラに泳ぎ回らず、一団となって移動するアイガモたち。集団で行動するのが安心なのか、福島県いわき市のアクアマリンの大水槽を泳ぐイワシの群れを見るようだった。


いやあ、可愛い

 6月8日(日)、10:00。ちょっぴり緊張気味に味菜畑の駐車場で佇立している山田勇一郎さんに一言ご挨拶。

長谷川 お疲れさま、やっと今日という日を迎えましたね。
山田 ええ、どうにか。

 言葉が少ない。表情もちょっぴり硬い。曇り空で薄ら寒い天気の具合に心が同調しているのか、参集した数が予想より少ないことを気に掛けてか、あるいは見も知らぬ人を前に演説めいたことをするのが億劫なのか、その辺りは判然とはしない。ただし、いつもの山田さんの穏やかな表情でないことだけは確かだった。
 さて、時間だ。味菜畑の駐車場に集まった「アイガモ放鳥会」参加者約30名を前に、山田さんから挨拶。つづいて、放鳥する田んぼ目指して徒歩で出発。その距離約2キロ。時間にして約30分。参加者は集合場所にて「山田農場のお米ができるまで」というA4チラシを受け取っているので、その内容を読みながらウオーキング。
 A4チラシの内容は[田起こし][塩水選][温湯消毒][育苗][代掻き][田植え][アイガモ][収穫」について150字前後で説明されていて、ここでは[田植え][アイガモ][収穫]の説明を採録しておきます。

[田植え]一般の農家の半分の密度で植えていきます。これを疎植といいます。疎植にすることによって太陽の光を全身で浴びてすくすくと育ち、病気にもかかりにくくなります。不思議なことに密に植えたものと収量は変わりません。ふつうは田植機を使いますが、今回は大部分を手で植えました。
[アイガモ]産まれてから一週間大事に育てたアイガモの雛を田に放ちます。雑草とその種、ウンカなどの害虫とその卵などを食べてくれますが、不思議なことに稲は食べません。昔の人は除草を手でやっていて、「株の周りを8回かき回せ」といいます。これは稲株を刺激してやることによって生長がよくなるからなのですが、アイガモは一日中刺激してくれるのです。糞は肥料となります。
[収穫]お米を刈り取ります。そしてアイガモも収獲します。今年活躍してくれたアイガモは来年は使いません。アイガモ農法とは稲作と畜産を同時に行なうものなのです。つまり「お米とおかずを同時につくる」ということです。

 こんな基礎知識を仕入れながら、田んぼへ。
 田んぼは1.5反(15a)で、2週間ほど前に田植えは済んでいます。
 田んぼの畦で山田さん、こんな説明をはじめます。
「これから田んぼにアイガモを放します。1人1羽ずつ持ってください。一斉に放つようにしましょう。これは6月1日に産まれたアイガモです。実は産まれた翌日に、もう一つの田んぼに24羽を放したんですが、今回のアイガモ農法ははじめての経験なので、いろいろなテストも兼ねているのです。ここに放つアイガモは生後1週間のアイガモなんです。それではお願いします」
 一斉に放たれたアイガモは、四散するかと思ったら、団体行動で向こうの隅に移動。すると今度は反対側のコーナー目指して飛ぶように移動。場所によっては土が見えているところもピチャピチャと足音を立てながら横切っていく。リーダーの指示のもとに一糸乱れぬ団体行動のようであっても、さて、誰がリーダーなのか、皆目見当がつかない。個体差はこれから徐々について来るのだろうが、なにせ生後1週間では見分けようもない。
 山田さんに質問する。

長谷川 アイガモのエサになる草や水中の虫が田んぼには見当たらないようですね。
山田 まだこれからですね、あと数週間して、陽射しも強くなってくると、嫌になるほど草が生えてきます。
長谷川 でも、なんでアイガモは稲は食べないんでしょうか。
山田 フラミンゴって知ってます? くちばしの裏にこし器のようなものがあって、水といっしょに吸い込んで、くちばしのこし器で漉しながらエサを食べてるんですって。アイガモの場合は口の構造上の問題でイネ科の草は食べられないんだそうです。
長谷川 そういえば、くちばしの形はアヒルですね。それから、説明書きにあった「疎植」なんですが、苗の数が3〜4本で大丈夫なんですか。向かいの田んぼは少なくとも1株7〜8本はあり、しっかりしてるんですけど。
山田 いまは田植えが済んだばかりで、なんだか頼りないですが、すぐに分蘗(ぶんけつ=根に近い茎の関節から枝分かれすること/広辞苑)を繰り返して、すぐに追い越しますよ。への字曲線って言うんです、その生長の進み具合を。しかも、アイガモが株と株の間を泳ぎ回ることで苗を擦っていきます。そうやって苗は刺激を受けながら、太陽の光もふんだんに浴びて、密植された稲株に比べ、ますます逞しく成長していくんです。[アイガモ]の説明でも書きましたが、「株の周りを8回かき回せ」と昔の人は言ったそうなんですが、それ以上のことをアイガモがしてくれますから、いまに見ていてください、追い越しますから。

 それにしてもなんて可愛いんだ。羽毛の色は、『色の手帖』を引いてみると「鳥の子色」と「淡紅色」の中間くらいの色味に、頭頂と尻尾に薄墨を掃いたシンプルなデザインのボディペインティング。遠い昔、生まれたてのヒヨコを、縁日でせがんで買ってもらったことを思い出した。迂闊にも我が家には猫もいて、ピヨピヨと鳴くそのヒヨコは翌日、学校から帰ってくる前に食べられてしまったが、この近所の猫や犬の餌食にならないんだろうか。

長谷川 外敵からどうやってアイガモを守るんですか。この近所に犬や猫を飼ってるお宅はないんでしょうか。
山田 まず、田んぼの周囲を高さ1メートルのネットで囲います。その外側に触れると感電する電気柵を張ります。3000ボルトですから、間違っても触ったりしないでください。感電すると相当な痛みです。2秒間隔のパルスで通電したり、非通電になったりする仕組みなんです。牛の放牧場などで使われている電気柵ですが、これで犬やイタチやキツネなどは防げます。猫は水が恐いのか、そもそも田んぼには近づきません。犬やイタチはこの電気柵に一度でも触ったら、もう二度と近寄らないでしょうね。それから田んぼ全体に細いテグスを張り巡らして、カラス除けにしています。
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↑黒いネットの外側、水平に張ってあるこの銀色の2本のコードが電気柵とバッテリー。絶対に触れないように!

 実は、こんな説明を受けていながら、ボクはアイガモに近寄って写真を撮ろうとして、電気柵に触ってしまった。左手でカメラを持っていたが、その左手に接触して感電した瞬間、ビシッと激しい痛みがして、掌が自動的にかぱっと開き、手にしていたカメラを落としてしまった。落とした場所が幸いにも田んぼの水が干上がった部分だったので事なきを得たが、それにしても、もの凄い痛みだった。心停止した人に電気ショックを与えて心臓を再起動させる除細動器(AED=Automated External Defibrillator)も凄いパワーだが、基本的にはAEDと同じ。余談ですが、睡眠時間が不足すると出てくるボクの不整脈が、不思議にもあの電気ショックを受けて以降、まるでパソコンを強制終了して初期化したみたいに、調子がいい。

山田 よーく見ててください。アイガモの水掻きがついた足で水を掻いて水面を進んでいますが、泥もいっしょに掻き混ざって草の種も根付く暇もなく、それで草が生えて来ないって訳です。水草が水面を覆うと、太陽の光が田んぼの底まで届かず、田んぼの土の温度も上がりません。農家にとって水草は見るのも嫌な存在なんです。忌み嫌われているその水草はアイガモのエサでもあるので、ある程度ないと行けない。アゾラという浮き草がいいってアイガモ農法の先人が言うんですが、きっとこの辺りにもありますよ。

 放鳥も予定通り終わり、各自の写真撮影も済んだ頃合いを見計らって、山田さんが必要事項を伝える。
「さて、みなさん、アイガモ放鳥に参加くださいましてありがとうございました。今日放鳥してもらったこの田んぼですが、1.5反ですから約9俵のお米ができます。この9俵というお米はおおざっぱな計算で9人の人間を一年間賄える量です。日本人全体ではどれだけの田んぼが必要になるか、あとで計算してみてください。それと、多分10月頃に、大きくなったアイガモを解体する『アイガモ解体教室』を計画していますから、ぜひ参加してください。以上で今日のアイガモ放鳥会を終了したいと思います。みなさま、ご参加ありがとうございました。このあと、よろしければ、一週間前の6月2日(月)に放鳥した田んぼにご案内します」

 そんなこんなのアイガモ放鳥会でしたが、さて、これから秋まで、飯島農園に出掛ける途中のチェックポイントが二つ増えた。一つは鷹島さんの挑戦している田んぼの見回り。もう一つが山田農場のアイガモ農法の田んぼ。幸い、二つの田んぼはほぼ同じ場所にある。

山田さんからのメッセージ
 よろしければ、たびたびアイガモたちの様子を見に来てください。そうすると、アイガモたちも人になれて呼べば近寄って来るようになります。また反対に、カラスやキツネなどは人の気配があると近寄って来なくなります。そんな意味もあって、どうかアイガモの成長する姿を見に来てください。
by 2006awasaya | 2008-06-12 12:19 | 真剣!野良仕事


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